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通過シナリオ ・海が枯れるまで/HO1/END⑧ 身を任せ 瞬きを忘れ 息の仕方も忘れて 性格:悲観的かつ諦観的。他人を深く信用できない。 好き:絵を描くこと、家族 嫌い:自分の顔、鏡や水面、容姿を褒められること、他人 一人称:僕、俺(キレた時) 二人称:貴方、お前(キレた時) 三人称:さん 誰もが振り返り見蕩れるほどに美しい容姿の画家の男。 どんな時でも無表情で感情を表に出さない。しかし物腰は丁寧。人と喋るのが苦手なのかあまり目を合わせようとしない。 絵画の世界ではその容姿も相まってかそこそこ著名な存在。休止中なのか、はたまたスランプなのか、ここ1年は新作が発表されていない。 「………………私の名前……海淵です。海淵漂…」 「…なんですか?人の顔をジロジロと…」 「何も話す気は無いです。私に関わらないでくれませんか？」 ──────────── 彼はごく普通の家庭で生まれた、普通ならざるほど美しい少年だった。 その容姿から彼は幼い頃より誰からも愛されていた。誰よりも目立ち、誰もが彼の味方になった。何もかもが彼の美しい容姿を愛していた。 それ故彼は普通の幸せを掴むことが叶わなかった。 彼が笑ったのなら、彼のその笑顔に誰もが見蕩れもっと笑わせようと努めたし、そうした相手に酷く嫉妬して争いが起こった。 彼が涙を流しその美しい顔を歪めようものなら、周囲は彼をいたわり、そして彼に涙を流させた相手を酷く責めたてた。 感情を少しでも表に出せばそれだけで周囲を動かしてしまう。それが怖くて恐ろしくて、いつしか感情を自らの内に閉じ込めるようになった。 笑うことが怖くなった。泣くことが怖くなった。怒ることが怖くなった。ほんの少しでも笑ったり悲しんだりすれば、それだけで周囲は自分のために、否、自分のせいで動いてしまうから。 そうして感情を内側に閉じ込めても、世界は彼を放ってはおかない。 どんな場だろうと、どれだけ彼に愛想がなかろうと、彼がいるだけで人は彼に惹かれ、そして彼の気を引くために、目を向けて欲しくて集まってきた。ある人は物を贈ってきたり。ある人は彼の役に立とうとしたり。そしてある人は自分に目を向けて欲しいあまり優しい彼の性格を知ってか、わざと怪我をしてみたり。そして、ある人はそうしてしまう彼に少し遠くから憎しみの目を向ける。そんな他人の目に囲まれて、いつしか誰かと話すことも、誰かと目を合わせることも怖くなった。他人がただただ恐ろしく思えて、そして、それ以上に自分の顔が怖くて憎くて仕方なくなった。こんな顔さえなければ、きっと普通の日々を過ごせたのに。 いっそ顔を剥がしてしまえば自分は普通になれるのだろうかと、なんどもそう思った。けれど、幼い頃この世を去った母が言った「貴方のその綺麗な顔は、神様からの贈り物だから。どうか嫌いにならないで」その言葉がそうすることすら許してくれなかった。 他人と関わることが怖くなった彼は家に引きこもるようになった。そんな時興味を持ったのが、自分を住まわせてくれている祖父母の家にあったアトリエ、そして絵画である。 ずっと引きこもっていてやることもなかった彼は、そのアトリエで絵描きである祖父に指導を受けながら絵を描くようになった。絵を描いてる間は外の世界のことは忘れられた。自由だった。そうしてる間に、描いた絵を祖父に一緒に出品してもらうようになった。拙い絵に与えられる評価は特段良いものではなかったが、それがむしろ正しく自分の内面を見てくれていると感じられて嬉しかった。絵の世界でだけ、彼は平凡でいられた。 そんな日々も長くは続かず、ほんの些細なきっかけで彼は顔を見られてしまうのだが。 瞬く間に彼は美しすぎる天才青年画家として名を馳せ、画家の端くれならば知らない人はいないほどの著名人となった。 半年に1枚、安値で売れれば良かったような彼の絵は以来全て売り切れるようになった。 結局、ようやく見つけた平凡な幸せも自分そのものへの評価も、全部全部失われた。 ある日、あまりに全てが耐えきれなくなった彼は家の風呂場で手首を切って湯船につけ、死のうとした。 そのまま死ねたら楽だったけれど、彼の祖父が運良く発見し病院へと運び込まれ一命を取り留める。そんな所まで、彼は不運な程に幸運だった。 彼を酷く心配し心を痛める祖父母から逃げるように、完治した彼は最低限の荷物をまとめて家を出た。 なんでもいいから死にたかったけれど、他人に迷惑をかける死に方はしたくなかったし、祖父母に死ぬことも知られたくなかった。誰にも見つからない場所で孤独に死んで、そのまま骨まで土に還るくらいずっと孤独に死にたかった。 この1年間、海淵漂は自分が孤独に死ねる場所を求め彷徨っている。暗い海の淵で、ずっとずっと漂っている。 【イメソン】 ・炉心融解 『核融合炉にさ 飛び込んでみたら そしたら きっと眠るように 消えていけるんだ 僕のいない朝は 今よりずっと 素晴らしくて 全ての歯車が噛み合った きっと そんな世界だ』 ・笑わないヨハネ 『笑わないヨハネこんな歪で 醜い僕のことを どこのだれが分かるのだろう 分かりたいと思うのだろう 笑わないヨハネこんな自分を 好きになれるだろうか みんなが言う当たり前が 僕には一つも分からないのに ねえ』 ・孤独の波にさらわれないように 『本当の話は私だけ 私だけ知ってる 声の出せなくなったどこかの人魚みたい 押し寄せる寂と孤独は余波名残って 溺れてしまいそうなの 孤独の波にさらわれないように 掴めたのは細く脆い糸だとしても 水底に見える貝殻がどんなに 美しく見えたとしても』 ・躍る浮遊隊 『息を吸って吸って吐いて 繰り返す日々に 嫌気がさして 吐きそうだ 意味を知って知ってそれで 何を得られるの 潜り込もうよ闇へ』

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