タグ： クオリアは嘲笑うHO3

上藤 紫苑（かみどう しおん） 誕生日：9月28日 イメージカラー：半(はした)色　#a69abd 　上藤紫苑は、ピエロメイクで島内を闊歩する頭のイカれた奴として有名である。 　自分のことを「あっし」と呼び、大げさなリアクションをする。ジャグリングが得意で、島内のストリートで時折披露している。ピエロとしての名前はショーン。単純に紫苑のもじりだ。 　しかしいつもピエロ然としているわけではなく、講義中や私生活ではそれほど目立たない男子高校生だ。 　一人称は僕。 　彼が有名なピエロの人物であると知らない人も多い。とはいえ劇団で中の良い人たちはみんな、真面目で気の弱い彼がショーンの正体であると知っている。 　そんな彼にはショーンの正体である以上の秘密がある。秘密というよりは悩みと表現した方がいいかもしれない。 ▼悩み 　世界五分前仮説という話がある。世界が創造されたのは実は5分前で、私たちは過去の人生という記憶を植え付けられた状態であるため、世界が古くから続いていると思い込んでいるというものだ。 　荒唐無稽な話だが、上藤紫苑は、この仮説が正しいかもしれないと思っている。 　彼には学園都市ヴェリタスに来る以前の記憶がない。普通の記憶喪失とは違い、自分が何を経験し、誰と会い、何をして過ごして来たかは覚えている——もとい、知っている。しかし、それは自分の思い出としてではなく、知識として、情報として頭にあるだけなのだ。 　だから彼は、自分の人生は3年前から始まったのではないかと考える。 　言わば世界三年前仮説。文字通り世界は3年前に始まり、人は「過去という情報」を「思い出」として植え付けられているという説。なぜ自分だけが、情報が情報のまま頭に入っているのかはわからないが、自分が特別な存在だと思うことはなかった。 　むしろ、世界から切り離されているような疎外感を感じた。 　居場所を求めて彼は劇団エデンに入団する。リーダーのHO1が語る陰謀論や突拍子もないことも、もしかしたら自分と同じように彼にしか分からない感覚があるのでは？と、興味を持ったのだ。 　怖がりで恥ずかしがり屋な彼は、自分の感覚を恐れることなく話すリーダーを尊敬している。 　そして劇団に入団したとき、優しい佇まいのHO4に一目惚れした。恋人になってほしい、そしてゆくゆくは結婚したいと考えてはいるが、臆病がたたって告白すらできないまま3年が経過した。 　彼にとってこの3年は人生とイコールだ。自覚はないが結婚したいと考えるのは、家族を得るため。両親という存在の情報はあるが、記憶がなければ他人なのだ。 　奇異の目で見られるのが嫌で、誰にも記憶がないことを打ち明けることなく過ごしてきた。好きな子に告白する勇気が出ないのは、世界に馴染めていないという感覚から来る不安がかなり影響している。 　好きな作品はピノキオ。記憶が入れられただけで思い出のない不完全な自分の姿をピノキオに重ねた。記憶が思い出として定着し、完全な人間になることを夢見ている。 ▼過去の情報 　記憶がないことを気にしているため、過去の話を自分からはしない。それでも求められたら答えるので、彼の両親は健在で、5歳上の兄もいることが友人に知られている。 　過去の知識によると、紫苑は兄のことをそれなりに慕っていたが、兄は良くできる弟のことを疎ましく思っていた。兄が専門学校を卒業してすぐに家を出て行ったのも、母親の兄弟を比べるような発言に嫌気がさしてのことだ。比べると言っても「お兄ちゃんもやればできるはずなのに」という程度だが、兄はそれを心底嫌がっていた。 　仲が悪いというほどでもないが、連絡を取り合うほど仲も良くなく、両親とはテレビ電話を繋いで話したことがあるが、独り立ちした兄とは紫苑が高校に入って以来話していない。 　しかし、紫苑が自分の記憶について話せるとすれば友人でも両親でもなく兄だろう。最初から嫌煙されている分、何を言ってどう思われても関係が大きく変わることはないだろうという感覚があった。

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