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地方名家の前妻の子ポジション。家を体良く追い出される形で聖歌隊にやって来た。歌うことは好き。あまり信心深くない。死にたくない。サボり常習犯。 一人称:俺 二人称:お前 「そういうのってなんか甲斐がないだろ」「あのボケ親父……」「母さんも歌う事が好きで得意だった」 アウトドア派・混沌中庸・内向的・リアリスト・無言実行やんちゃ系問題児・野生味の強い美貌・ルールは破るためにある・潜在的兄気質 トルコ系移民の母とイタリア人の父の間に生まれる。母は野心ある若い歌手で、父は地方の名家の生まれだった。父は彼女の芸能活動を応援する名目で口説き、やがて恋仲となった2人の間に産まれたのがイゼットである。母は自分に似て生まれたイゼットを溺愛し、父もまた彼を可愛がった。どこの者とも知れぬ外国人の女とその息子を見る周囲の使用人や家の人間の目は冷たかったが、父の妻子への溺愛具合からそれがあからさまに示されることはなかった。 しかしイゼットが6歳になった頃、母が流行病に倒れ亡くなると状況は一変する。惚れっぽく流されやすい男であった父は他の女にうつつを抜かすようになり、家の中におけるイゼットの肩身は徐々に狭くなっていった。イゼットは元から活動的な子供であったが、母の死後は外に出たいというよりは家にいたくないとも取れるような振る舞いをするようになる。家を抜け出して森をうろつき、教会で借りた本を木の上で読んだり、1人で歌ったりといったような事が増えていった。父は鈍感で愛の多い人であったため、そのような事になろうともイゼットへの態度をさほど変えることはなく、時たま顔を合わせれば母が生きていた頃のように彼を撫で、抱き締めたが、残念ながらその緊張感の無い態度はかえってイゼットを失望させた。 イゼットが7歳の時に父は再婚し、その年後妻との間に弟が産まれる。母と父の件についてまだ気持ちの整理が付いていなかったイゼットは家に来たばかりの後妻に対してそれなりに陰険な悪戯をしかけたため、彼女との仲は大変険悪なものとなった。ただ後妻もまたイゼットの母に似て気の強い女性であったこと、前妻と瓜二つの鮮烈な美貌を持ち、神出鬼没の幽霊のような振る舞いをするイゼットに最初から良い印象を持っていなかったことを踏まえれば、イゼットが彼女の部屋に蛇の抜け殻を放り込まずとも早晩関係が悪化していた事は想像に難くない。 イゼットと相思相嫌悪の仲であった後妻とは違い、6つ年下の弟は物心がつくと彼の母の目を盗んでしきりにイゼットに懐くようになった。神秘的な容姿と自由な振る舞いはかえって彼の憧れを掻き立てたのかも知れない。イゼットとしてはさほど悪い気はしなかったが、さりとてあまり仲良くすれば色々と厄介な事になるのも分かっていたため、上手くあしらいつつ、かわしつつ……といった態度で接していた。そういった猫のような振る舞いがかえって彼の弟を惹きつけていた可能性はあるだろう。 そんな折に聖歌隊から届いた手紙は後妻にとっては吉報であり、イゼットにとっては絶望の足音であった。後妻にとってこれほど体よくイゼットを追い出せる大義名分は他になかっただろう。軍や他の寄宿舎であれば父が止めたはずだが、名誉ある聖歌隊というのがまずかった。父はイゼットが歌う事が好きで上手いのを知っていたし、芸術への支援を惜しまない人間だった。父はよろこんで彼を送り出した。 イゼットは聖母信仰に疎く、その知識も浅かったが、「天使になる」という事が死の匂いを漂わせている事は十分に察することが出来た。またそこで死には至らなかったとしても、聖歌隊はボーイソプラノのみを尊重される世界だ。13歳の自分の身長が、去年より早く伸び始めている事にイゼットは気付いている。他の変化はまだ微かだが、この変化は進み始めればきっとすぐだろう。残された時間はそう長くはなく、どちらにせよ雲行きは怪しかった。 だがイゼットは生きる事を諦めたわけではない。今までも家の中で居場所が少なくなっていく中、あれこれと足掻きながら自分の誇りを守って来た。状況が悪くなったとして、やることは変わらない。これまでと同じように、なんとかやっていくだけだ。 父のことはボケ親父でどうしようもない人だと思って期待もしていないが、嫌いなわけではない。芯の無い、頼りないイタリア男だが、人を愛する気持ちだけはいつも本当なのも痛いほど知っている。 イゼットが好きな歌は、母が若い頃酒場で歌っていたような俗っぽい歌謡曲。生きていた頃の母が何度も歌って聞かせてくれた、そんな歌。「あんたは私に似てる、きっと立派な歌手になる！」母の存在と、彼女の言葉は今でも彼の人生の輝きだ。 イゼットはトルコ語の男性名。母命名。意味は栄光とかそんな感じ。野心やね……。パトローニは父親の苗字。意味はパトロン。そのまんまですね。父方の家系は昔から贔屓の芸術家を囲うエピソードに事欠かない感じだったのでなおのこと母が生きてる内は母子を冷遇しにくかったらしい。結婚前の母の名前はララ・アルカン。

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