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ハンドアウト１A　孤高の人 有名登山家、通称Ⅰ（アイ）。本名は岩谷徹。常にネックウォーマーとゴーグルで顔を覆っている。 顔も年齢もわからないというミステリアスさに反して、その登山の腕前が世界レベルであることから登山家のなかで人気を博している。 今まで登頂を志して途中で諦めた山はなく、その登山歴から彼を神のように崇めるファンも存在する。 しかし実際には岩の収集が趣味のただの陰キャ。主食はプロテイン、好きな食べ物は登山中に食べる日持ちする完全食。 登山以外に全く興味がなく、ブログを書いてアフェリエイトで生計を立てている。幸いにも彼の人気が功を奏して、ブログに紹介した登山グッズは飛ぶように売れるらしい。 しかし最近は寝袋にこだわり出して金欠気味のため、Youtube進出も検討している。しかし対面での取材が苦手なためテレビの出演は断っている。 最終学歴は高校。岩石収集の趣味は学生時代からであり、休憩時間は岩の図鑑を読むか校庭で石を探しているような子どもだったため、クラスメイトから虐められていた（本人はそう思っているが実際は軽く弄られていただけ）。そのため、人の視線が若干苦手である。顔をいつも覆っているのはそのため。訳を聞かれると決まって「自分が最高のコンディションを発揮できるのがこの格好なんだ」と返す。 顔さえ隠していれば人と触れ合うことや話すことに問題はない。 登山家を志したきっかけは父にあった。 父は生粋の登山家であり、良き父親でもあった。母は幼いころに病気で亡くなっており、父が登山に発っている間は祖母の家で過ごしていた。 父は８０００M峰においてトップレベルの致死率を誇るアンナプルナ、別名キラーマウンテンに登頂したことがあるほどのとてつもない経歴の持ち主で、登山の話をよく息子に話して聞かせていた。 勿論Ⅰは自分も山に登りたいと父に強請ったが、「自分の実力を見誤ればどれだけ安全と謳われている山でも命を落とす」と、中学生まではトレーニングしかさせてもらえなかった。高校生になったら一緒に登山をしようと約束をしていた。 しかし、中学３年の冬、父は世界で最も危険と言われる山、K2に行ったきり、帰ってくることはなかった。 Ⅰは約束を果たせなかった無念から一時はふさぎ込むも、その後父の遺志を受け継ぎ、父を超える登山家になることを志すようになる。 大学に進学する気はなかったが、祖母の勧めで高校に入学する。長期休みには世界各地を巡ってノウハウを積み、高校三年時にはエベレストへの登頂を成功させている。 今回狂気山脈の登頂を志した理由の一つに、父より高い場所から景色を見下ろしたい、父を越えたいという思いがある。 父から貰ったアンナプルナ山頂の岩石をアンクレットに加工し、お守りとして肌身離さず持ち歩いている。 自分が親切な人だとは微塵も思ってはいないが、登山において助けを必要とする人がいれば真っ先に手を差し伸べる性格である。どんな状況でも仲間を助けようとするのは登山家の性であるとさえ思っている。 嫌いな人は山に真摯に向き合わない人。登山家に根っからの悪い人はいないと信じている。

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