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橘幸慈は寺に生まれ、幼少の頃から仏道の道に励んできた、生真面目な高校生である。清廉潔白、その独特の着こなしからたまに小言を食らうことはあるが、普段の生活態度から目こぼしされている。 そんな幸慈には、とある秘密があった。それは「霊視」ができるということである。できる回数に限りはあるが、スピリット状態の存在を見られるのだ。 そういったことができるので、夏目心…又の名を「K」という男を師と仰ぎ、修行をしてい る。 幸慈は、己の「霊視」が行えるという特異性を受け入れてくれた師匠と、黒猫の霊のふく、その仔のまるとの修行の日々は何物にも変えがたい幸福なものだと思っていた。 今は一月ほど連絡が取れず、修行は中断しているが、幸慈はKのことを心から尊敬し、「お師匠様」と呼んで慕っていた。 連絡が取れないことに妙な胸騒ぎを覚えながらも、師匠からの知らせを待ち続けている。 橘幸慈と師匠…Kとの出会いは今から数年前のことである。 小学生だった幸慈は、下校の道すがら…交通事故で撥ねられ、亡くなっている黒猫と、その傍らで啼く一匹の子猫に出会う。なんとか供養して、子猫を保護してやりたいと思った幸慈だったが、仏教の知識も少なければ、このようなときの正解も分からない。己の無力に涙をこぼしていると、隣に青年が立った。それがKである。彼は、黒猫を埋葬し、念仏を唱えてくれた。 すると、黒猫の魂が現れて、すり、とKに擦り寄った。成仏できなかったのか、というKは、驚いている様子がなかった。 ひょっとしたら、彼も「霊視」がつかえるのではないかと思った幸慈は、Kに頭を下げ、師事を乞うた。 そして今に至る。 黒猫の霊にはふく、仔の灰色の猫にはまる、と名付けて、ふくはKが、まるは幸慈が面倒を見ている。 幸慈は色味が己とお師匠様に似ているな、と思っているが、少し気恥ずかしいので言ったことはない。 誕生日は3/15 幸慈自身、誕生花のクンシランの花言葉を気に入っている。 イメソン 仏手柑の寐/IDONO KAWAZU 抜心/傘村トータ

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