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5-4 ペット 5-1 動物に好かれる 2015私立探偵 EDU*STR 完全に自分をないものとする家庭に生まれた。 理由はわからずじまいだが、大人2人は決して自分を視界にいれず、名前さえ1度も呼ばなかった。 食事は勝手に冷蔵庫から取り、洗濯は自分でして、唯一空いている屋根裏部屋で生活していた。 扉は内鍵がされており、窓には鉄格子が付けられ、出ることは出来なかった。 10年間両親が惨殺されるまで、誰とも言葉を交わさず、たった1人で生きてきた。 惨殺された両親を見ながら、第三者である殺人犯にさえ自分は知覚されていないなら、本当に幽霊なのだろうか。そうぼんやり考えていた。 死体が腐っても、自分は外には出れないルールがある。仕方ないので死体と住むことにした。 その時、ふらりと1匹の黒猫が現れた。 鉄格子も鍵もあるこの家の中にどう入ってきたんだろう。ミイと鳴くのでミイと名付けることにした。 約1年。 少年と子猫との奇妙な共同生活の終わりは、地域の訪問者による通報だった。 その時そこに腐敗臭はなかった。全ての肉をこそぎとり、できる限り細切れにし、瓶に密閉されていたのだ。 大量の肉の瓶。 臭かったから。子供はこともなげにそう答えた。 彼のからだはガリガリで、電気も水道も止まったこの家で水も食べ物も尽きていたのに一体1年間どう生きてきたのだろうかと当時捜査に当たった警察は鳥肌が立ったという。 少年は無感情な目で世界を見つめていた。 猫は消えていた。 彼の世界をこじ開けたのはたった1人の男の涙だった。 いきなり目の前に現れた見た事のない大人が必死に謝り泣いていて、 なんでこの人はこんなに謝っているんだろうと心底不思議に思った。だが、その人の瞳に映る、涙に反射してキラキラと輝く自分を見て、鼓動がなった。ああ、確かに自分もこの世界に存在していたのだと。その時初めて分かったからだ。 彼の援助により、学校にも通い、年相応の生活を営み、人の心、優しさ、あらゆる肯定的なものを吸収し、いつの間にか幸せというものを感じることができるようになっていた。 よく笑い、よく話し、よく食べ、まるであの子供の頃などなかったかのように、そのまま成長した。 だが、その居場所を失った。 結局1人になる運命なのか、 前よりもずっとずっと悲しくて、毎日涙が出て、誰といても悲しいという気持ちで満たされて、そこで悲しみという感情も初めて覚えたことに気づいた。 全ての感情をあなたから教わってるんだ。 でも、あなたを失った今、俺はこれからどう生きればいいか分からない。 彼が亡くなった後、またミイが現れるようになった。あれから15年経ってるのに子猫のまま。人の死に吸い寄せられるような子猫の存在は、あの時よりも今確かに自分を癒してくれていた。 手には彼に繋がるルーツが沢山ある。 この宝石、この招待状、この呪文。これで全を知れば、彼のようになれるだろうか。

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