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「すみません、ちょっとお話を聞かせていただいても良いでしょうか。」 我々取材班が声をかけたのは、大阪市内のとある集積場で束ねられた雑誌を自転車いっぱいに詰め込み、 持ち帰ろうとしている50代後半から60代ほどに見える男性だった。 「お名前は？」 我々がこの質問を投げかけると、彼は困ったように首を掻いた。 「いやあ…戸籍をね、この生活始めて一年目の時にかな、売っちまったんで…俺を証明できるもんなんて、今はもう、なんもないんですわ。」 彼はチュンさん(仮名)。 いまではもう何年も本名を呼ばれることはなく、その本名も本当に自分の名前だったのかわからないようにさえ思うという。 「どうして、今のような暮らしを？」 そう聞くと彼は、言っていいものかとこちらを伺うようにしながら、ポツポツと語り始めた。 「どうしてかねぇ…まあ、若い頃からその日暮らしというか…なんていうかね、毎日会社に通勤したりする生活がね、どうにも合わなくてね…」 「世の中に対しての反抗心…っつうのか…単に刺激を求めてたのか…いやぁ若かったね…わざわざ中東やアフリカなんかの戦地に行ったりしてね。」 そういうと帽子を取り、今も頭に残る痛々しい弾痕を見せてくれた。 「今はこのとおり、すっかりジジイになりまして。もう戦えるような体つきじゃあないんでね。」 「若い時は本当に目の前のことしか考えずに戦地を飛び回っとったもんで、 　国に養ってもらう義務なんか、果たしてなくてね…いつのまにか、この辺の連中に混じっとったんですわ。」 我々が取材協力の礼を述べ謝礼を手渡すと、彼は深々とお辞儀をし、雑誌を山ほど積み込んだ自転車で、大阪の都会の隅へと消えていった。 ●所持AF ホイホイのペンダント

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