タグ： 陽音

●市の高校に通っている。 性格は決して明るいとは言えず、一度落ち込むとなかなか立ち直れない。 幼い頃に両親が突如失踪し、施設に預けられることとなった。 母も父も優しい人だと思っていたし、それなりの理由があったのかもしれないが、「捨てられた」と言う絶望感と、今のこの状況だけが事実のように思えた。 それでも、最後の夜に食べたハンバーグの味は今でも覚えている。 もしも父と母に会うことができたら 「なぜ自分を置いていったのか？」 「自分のことを愛していたか？」 と問いかけたいと思っている。 施設に預けられるようになってからも、昔から親しい幼馴染たちとは交流をしていた。 特に「糸色　世司」は、澪が寂しい時や心細い時に励ましてくれたり、話を聞いてくれるなどしてくれたおかげで、澪は寂しいながらも心が荒むことなく穏やかに過ごせた。 いつしか、そんな世司に恋心を抱くようになる。 最初は「ともだちとしての好き」とそう変わらないような感情だったが、思春期になる頃にはそれは少し熱を帯びていた。 目があったり、手が触れたりするだけで照れくさかったが、そんなむずがゆさが心地よかった。 しかしそんな世司すらも、澪の世界から消えてしまう。 大切な人がまた1人、消えてしまった。 そのことにふたたび絶望を感じずにはいられなかった。 世司に戻ってきて欲しい。また一緒に笑いあいたい。 恋人になりたいだなんて思わないから、今までの関係で構わないから…それすらも贅沢なら、ただの知り合いでもいい。 「世司がいる」という事実が欲しい。安心したい……。 どうしてみんな、いなくなってしまうのだろう。 大切な人ほど、手が届かなくなってしまうのではないか？ 私が愛したから、消えてしまうのだろうか？ そんな疑問が澪の頭の中でぐるぐると渦を巻き、更なる不安を煽った。 ほかの幼なじみ2人に対しても、この先どう接していけばいいか迷っている。 大切にしたいけど、いなくなってほしくない。 ずっと昔のままだったらよかったのに。

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