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KPCとの関係 →異父兄弟、おそらく 灰田 夜鈴（はいだ よすず）、元は瀬尾 夜鈴（せお よすず） 高校1年生、女 母親は幼い時に家を出ていった。不甲斐ない父親だったから愛想をつかされたんだと思う。実際僕の父親は押しに弱く厄介事を全部背負ってきてしまうような人間だった。僕はそういう父親のことが嫌いではなかったけど。 母方の親戚とは縁が切られていた。 人の良さそうな祖母がいた事だけは覚えている。 自分がついて行かなかったこともあり、母親にはもう会えないだろうと想像がついていた。きっと葬式に行くこともないだろう。そもそも捨てられたのは僕と父親で、母は僕について来て欲しいとは思っていなかっただろうけれど。それでも僕は母親のことが好きだった。 写真の中だけに残る母の姿は笑顔だった。 素敵だなと思った。声も思い出せないけれど、自分と父を苦しめたはずの母親に対しての感情は憧憬だった。 そしてそれは父親でさえも同じなのだろう。きっと似た者親子なのだ。僕達は居なくなった母親に惹き付けられ続けている。 －－－－－－－－－－－－－ 高校2年に上がる春休みを目前とした冬の日、父との二人暮しの小さなアパートの一室にハガキが届いた。差出人は祖母、内容は母親の訃報だった。 この歳になって知ったが、母親には祖母以外の親類がいなかったようだった。足も体も悪くした祖母は葬式をあげることもままならず、僕達父子に連絡をしたのだという。願わくば彼女の葬式（そうでなくても死亡手続きの手伝い）をあげて欲しい、そしてもっと願わくば……彼女の忘れ形見の少女を引き取って欲しいと。 母親には今年15になる子供がいた。誰との子供なのか、そもそも彼女の実子なのかすら祖母には分かっていなかった。その疑問は当然であり、彼女が生まれたはずの時期は僕の父親と結婚していたはずだった。父は出張や遠征で家を長期間空けることが多かった（と聞いている）から100％有り得ないとは言えないが、幼い僕を育てていたはずの母に子供が別にいたとは考えにくい。 ーでも、彼女は母親にそっくりだったのだ。 僕の知ってる写真の中の母親の姿と。 多くの手続きと問答の末、僕と父親の二人暮しのアパートに1人の少女が増えた。元々母親と二人暮しをしていた彼女は母が事故でなくなったことによって孤児状態になってしまったのだ。祖母が人を育てられるような状況に無いことから、僕らの家に押し付けられた形だ。これを結局ひきうけてしまうのが父親らしいという感じがする。 僕は、高校2年になって、妹が増えた。 －－－－－－－ 彼女はとても明るく純真な性格をしていた。僕ら家族にとって良かったのは彼女が家事が上手かったことだろう。彼女が作る料理は父親が作ったものより僕が作ったものより遥かに美味しかった。 何処の馬の骨とも分からないはずの僕にも彼女はよく慕った。兄兼先輩のような関係性。当初の僕は身近に女子がいる状態に全く慣れなかったが、時間が経てば次第に当たり前の生活になっていた。何より僕は彼女の中に居ない母親の影を見ていた。複雑な境遇にあり酷い苦労と悲しみを背負っているはずの彼女が何を思っていたのかは分からない。ただ表面上の話をすれば、彼女は常に笑顔と明るさを絶やさなかった。何かしてやりたい年上心と、甘えたい心が均衡し、歪ながらに兄妹関係が築かれていく。驚くことに、僕にとって彼女の存在は居心地のいいものとなっていった。 －－－－－－－－－－ 冬。彼女が生活に加わってから1年を迎えようとしたある日。彼女は遊びに行くと言って家を出た。 珍しいなと思った。彼女が友人と遊びに行くことを理由に家を空けることはそう無かった。平日の放課後はいつもは家にいるか部活をしている。ただ、特別疑問を抱くことも僕には無かった。彼女の性格ならすぐに仲のいい友達が出来ているだろう、友人と遊びに行かないのはそういう性分なのだろうと考えていた訳だ。実際帰宅部を決めてずっと家にいる僕もそうだから。 彼女は帰ってこなかった。正確に言えば、動かなくなって帰ってきた。 家で父親と彼女の帰りを待っているところに警察がやってきた。僕はそのまま病院に連行される。 －橋から落ちたらしい。 周りに誰も人がいなかったことから詳細は分からないが、橋から転落して頭を強くうちつける、川に溺れ流されたとのことだ。 僕の目の前に、彼女の遺体がある。 人の死体を見るのは1年ぶりだ。 －－－－－－－－ 【以下、具体的な話】 〇彼女の死について ･電車を走らせて着くくらいのとある橋での転落。彼女が母親と二人暮しをしていた場所のすぐ近くだった。 ･1人でその地へ赴いている。 ･彼女の遺体と共に、似合わぬブローチが見つかった。そのブローチは過去の写真にて母親がつけていたものと同じだった。 ･事故なのか、はたまた自殺なのかは分からない。 ･母親の命日に近い日だった。 〇彼女の人柄について ･明るく笑顔を絶やさない。子供らしくもあり母親らしくもある少女。お茶目な所はあるが、年齢を考えると大人びて見えるような感じ。 ･家事が上手い。母親との二人暮しの時に沢山やっていたと話していた。 ･高校は真央と同じ高校に入学した。アカペラ部に入っている。 ･真央の事は「真央くん」と呼ぶ。時々お兄ちゃん呼びをする。むず痒いからと真央が初期に否定したのが原因。 ･本人も自分の出生について理解していないと話していた。 〇家族の過去の話について ･父親は元々は出張を繰り返す人であった。母親が1人で真央を育てていた（記憶は無い） ･3歳頃に離婚。これを期に父親は出張をやめるようになる。シングルファーザーとして頑張って真央を育てあげる。 ･どうやら母親は夜鈴と2人で暮らし彼女を育てあげていたらしい。夜鈴に父親の存在の記憶は無く、物心ついた時からシングルマザー。 ･セッション1年前に母親が亡くなる。夜鈴が唯一の親戚である祖母を頼ると、灰田一家の存在を教えられる。 ･母親については、葬式と呼べないレベルの少人数での低予算火葬を行った。参列者は灰田真央、父親、夜鈴、祖母の4人である。 ･夜鈴を灰田一家が引き取ることに。母親が居なくなってから引越しをしていなかったため部屋やスペースに余りはあった。夜鈴は志望校を変更する形で真央と同じ高校を受験し合格した。

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