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まきた　ゆえ 17歳の時に立てこもり犯の人質になったことがあり、それを助けてくれたのが鷲塚だった。犯人はその時射殺されており、鷲塚は責任を感じて自ら退職したことになっている。 助けられた唯縁は、両親からは必要以上に過保護に接せられ、同級生たちからは野次馬的な奇異の目で見られ、身の置き場のない高校時代を過ごした。 大学は地元から離れたところに行ったが、変わった名前のために事件を覚えている人もおり、面白おかしく当時のことを聞かれる生活からは逃れられなかった。 そんな中、自分を助けてくれた警察官が射殺の責任を負わされて退職したと聞き、様々なツテを辿って会いに行った。 最初は拒絶されたものの、何度もアタックするうちに鷲塚が根負けし、探偵の手伝いを始める。 手伝いのないときは知人の紹介でバーやレストランでピアノを弾いている。 22歳の時に恋人の鷲塚祐を亡くす。暴走した車から自分を庇う形ではねられた彼の遺体の損壊は凄まじく、それを目にした唯縁は心の均衡を崩してしまう。 祐さんの幻を見続けることでなんとか自我を保っているような状況になる。その時に担当医となったのが、同居人の犯人である鬼嶋だった。 鬼嶋の起こす事件に巻き込まれ、唯縁はその果てに自分がずっと幻を見ていたことに気付く。 ずっと祐さんが手を繋いでいてくれると思っていたけれど、それは都合のいい夢でしかなかったのだ。唯縁は祐さんが亡くなっていることに気付かず、ニャラルトホテプ召喚の儀式で死者を蘇らせることを拒絶し、彼との幸福な日々を永遠に失った。 ただ、生還した唯縁の指にはプラチナのペアリングがはまっていた。恋人になってから初めての祐さんの誕生日に、重すぎるだろと引かれながらも唯縁が渡したものだ。 彼が亡くなってから自分の指にはめていた指輪を握り込むと、少し冷たい彼の掌を思い出すのだった。 これがある限り唯縁は生き続けるだろう。そして時々幸せな夢の中で、微笑む祐さんの手をそっと握るのだ。 唯縁は2代目の所長として鷲塚探偵事務所を継ぎ、大切な人がそうしていたように、警察では助けられない人々のために尽力することになった。 継続探索者として出る時は27歳。来年で恋人と同じ歳になる。

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