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うっかり入社してしまった意識高い系ブラック企業の過重労働によって鬱になり、とある経緯があってクビになったところを、秋月に拾われた元社畜。精神的にいくらかのゆとりを持てるようになった今では、私立探偵としてさまざまな依頼を受ける彼の助手として雑用をこなしている。 寝食もままならなかった当時、ストレスが限界に達すると、深夜３時だろうが明日の会議の資料がまっしろだろうが、狂ったように料理を作りだしては食い尽くすという奇行に走っていた。その名残で、なにか不安なことがあると食卓の品数が増える癖がある。この前は５リットルの紅茶を秋月に飲ませた。潔癖にも拍車がかかったため、つい洗いすぎてしまう手は荒れがち。前職を辞めてからしばらくは、趣味だったはずのゲームにも手がつかなかったが、好きだった監督の八年ぶりの新作が出たことをきっかけに、コントローラーに触れるようになった。 ◎とある経緯 　社内のデスクに座ってるだけで吐きそうだったので、外回りと称して公園まで逃げる霧生。それでも仕事はなくならない。死んだ目でパソコンに向かっていたら、突然話しかけてきたのは育ちのよさそうな美しい男だった。お疲れですか、お仕事大変そうですね。見りゃわかるやろ。ろくに寝てない頭ではなんと返したのかわからなかったが、数日後、労基が会社に乗りこんできたことで事態は急変する。先月過労死した同僚の親による裁判、その証拠となった録音テープの中で「昼休みなんか幻」「退勤してから資料を頼むな」「ろくに寝てないから御社の担当の名前すら出てこない」「有給なんてとったら半年は嫌味言われる」と語っているのは間違いなく自分の声だった。お茶の間を騒がせるほどの事件となった弊社の株は大暴落、お前がおかしな証言をしたせいで、とクビを切られた霧生の前に現れたのは、あの時の優男だった――次回、「お前のせいで文無しや責任とってもらうぞ」！デュエルスタンバイ！ 〈コンピューター〉は前職の杵柄。また〈回避〉は歩きながら仕事をしていても人にぶつからないように、〈機械修理〉は機器にちょっとしたトラブルが起こっても対処できるように、という社畜のためのサバイバル技能である。秋月の助手に就いてからは遠出も増えたが、長らく通勤にしか使っていなかった〈運転〉は低め。〈目星〉は汚れによく気がつくように。〈キック〉は、荒事になっても身を守ることのできる手段としてキックボクシングを選んだため。 2021/02/20～21　チョコレートミルクに溶けて

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