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【診療録　五百三十一】 ——————————————————————————————————————————————————————————————— 九条　藤夜　十二歳 ——————————————————————————————————————————————————————————————— 九条家の末娘、上に兄が二人いるがあまり仲は良くない また家族のだれにも見られない明るい髪色と赤みがかった瞳が顰蹙を買い、腫物と扱われる 典型的な男尊女卑の思考の元育った兄達が好ましいわけがなく、かと言って受け入れるだけ淑女ではなかった 要するにお転婆だった彼女は、すくすくとのびのびとある程度自由に生きるために 兄達や使用人から逃げるための手段を思案するようになったようで 小柄な体とその脚力を生かしてしばしば家を抜け出していたようだ 純粋な疑問として、「どうして従わなくてはならないのか？」と母親に聞いたことがあったが母親は酷く狼狽え、 なんの答えも出せぬまま終いだったとのこと ——————————————————————————————————————————————————————————————— ”以下、これは個人的な問診であり、彼女の心情を推し量ったものである。” ——————————————————————————————————————————————————————————————— 懐疑は芽吹き胸中ですくすくとのびのびと根を張り、心中に花を咲かせる 身中の花びらを吐き出さねば苦しかったので、歌を歌った 唱歌は面白くないし、花びらの吐き出せる量も少ない ふと、北の里より奉公に来ていた使用人が口遊むわらべ歌が耳に留まった それのなんと胸の弾むことか！ 真似をして音を吐き出してみればたくさんの花びらが宙にほどけていった たくさんの花歌を使用人に教わり、彼女が大好きだった刺繍を学び、幸せな数日を過ごした時はとてもとても楽しくて暖かくて 更に数日後、その使用人が解雇され里に送り返された時は、家中の花瓶や壺を割って歩いたほどだ 父からの叱責や兄達の罵倒など耳にも入らなかった 耳に入り込んでくるのは枯れた葉が枝が、擦れる不愉快な音だったので お気に入りのブーツを履いて庭の端にある漆喰が欠けた、粉の門を通り抜け 裏山の森へ駆け出せば、たくさんのホトケノザが群生していたので、ひとつつみあげて口へと運ぶ 甘く広がる蜜の味にぽろりと瞳から水滴が落ちたところで腹の底に広がる妙な空腹に気が付いたため 夢中で花の蜜を吸った、吸った、吸った 吸っても、吸っても、吸っても空腹は満たされなかった もっと吸わなくては！ それからは吸える花を調べ、探しに家を抜け出し、家族の目を掻い潜るように駆け回った ——————————————————————————————————————————————————————————————— ”以下、彼女との問答の記録” ——————————————————————————————————————————————————————————————— あなたにとって彼女はどんな存在でしたか？ 「弱く、虐げられる存在。でも姉であってほしかったと思う」 あなたが抱いた感情は何ですか？ 「わからない。頭の根っこが熱くなって、胃の腑の花がお腹がすいたって」 あなたにとって九条とはなんですか？ 「つまらない場所。末娘をどう扱うかなんて知れている。嫁ぐのなら北に嫁ぎたい」 あなたの体には何があるのですか？ 「花。花のような女性になりなさいって。だから藤夜」 どうしてそのような言動をするのですか？ 「質問の意図がわからない。言動？」 えぇ、あなたの発言や行動は常軌を逸脱して…いえ、少々他の人間にはないものなので 「そう？本当のことを言っているだけだよ」 話しを変えましょうか。最近裁縫を始めたそうですね？ 「女学院でみんながやっているから。嘘、あの人が教えてくれたから。うまくはできないけど、花の模様を刺繍するのは楽しい」 新しい友人はできましたか？ 「わからない。でも花を持っている子が三人いる。」 花、とはいったい何ですか？ 「花は花。みんな持ってる。でも疑問に思わなければ、逆らおうと思わなければ、願わなければ咲かない」 なるほど、その三人は花が咲いているのですか？ 「そんなことわからない。私は彼女達じゃないから、でも咲いていたら嬉しい、と思う」 そうですか。お話をどうもありがとう藤夜さん。また来ますから今度もそのお花について聞かせてくださいね 「構わない。けれど先生。この問答に意味はない。お父様が知りたいこともわからないし欲しいものも出てきません」 「そもそも、花を咲かせることが自体がこの世には許されていないからです」 「それでも命短し恋せよ乙女。咲かぬ花など愛でられはしません。だから私は咲かせるのです」 「私達の花は綺麗ですよ？それは音にのって宙を漂い、布地の水面に揺蕩う」 「こんなに綺麗なものを認められないだなんて、お悲しいことですわね？」 そう彼女は「九条のお嬢様」として口の端を緩やかに引き上げ 日傘をするりと掴み、問診の為用意されたにしては豪奢な部屋を出て行った。 ——————————————————————————————————————————————————————————————— 日本精神神経学会　呉 秀二 ——————————————————————————————————————————————————————————————— PL・KP向け解説 ただのおてんば娘と見せかけてこの時代的には精神疾患と思われる言動や行動を繰り返す 天然を装って実は結構まともな少女です 女性が強く居られない世間を理解しており、でも言いなりにはなりたくないためによくわからん方法で反旗を翻しています 度重なる脱走と、花の蜜を食べ歩き、華族が決して口にはしない庶民の歌を口にします 九条は五摂家からとってきましたが、本家ではなく分家であるとしています また、後の世で「九条撫子（同居人PCﾛｽﾄ済）」という子孫が誕生するので、本人が死亡した場合は兄のどちらかから血筋がつながります。 花→華族の連想ゲーム、煮え切らない感情と思考がこれに値します めんどくさい物言いですが、要するに「命令されて嫌だ、親しく歌を教えてくれた彼女にまで酷いことをされて怒った、いなくなって寂しい」 ということです。子供らしい感情を捻じ曲げて表現しているだけです とにかく思い通りになりたくない でも問題は起こせないのもわかっているので絶妙なラインで真面目になってみたり、脱走して不真面目になったりします やればできるけどやらないし、やらなくてもいいのにやります 不思議系もどき天邪鬼代表です 学院の友人はNPCを含め3名のみ 文月 朔子に対しては面白いものを教えてくれる姉のように思っています 少し大好きだった使用人に似ているかもと思っている節もあります 家族構成は、父・母・兄・兄・藤夜 イメージ情報 花・天邪鬼・後の世でのモダンガール（生きてたらね） イメージソング　「flos」 [応急手当,聞き耳,図書館,芸術(裁縫/歌唱/料理),言いくるめ,信用,英語,+その他個人的な関心の技能ひとつ（目星）]

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