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あげは 膨大な金、軽い命、嬌声と怒号と高笑いが常に飛び交う闇カジノ、その真ん中でその場を盛り上げるポールダンサー。……は仮の姿、実はこのカジノのオーナーをしている。権限だけを持った所謂影武者的なオーナーが別にいる。 *☼*―――――*☼*――――― 元々は虐待を受けていた娼婦の娘。そこを当時のオーナーに拾われ、彼の役に立ちたくて必死にポールダンスや護身術、経理等の勉強をした。憧れから来る感情とばかり思っていたので、別に彼に振り向いて貰おうなんて当時は思っておらず、秘書として階級を上げてからも彼の元で従順に過ごしていた。 ある日、弟を紹介される。跡継ぎの出来ないその一家で、是非弟の伴侶になって欲しい……オーナーからの頼みとあれば断る訳にはいかず、仕事もまるでできない、ただオーナーと瓜二つの整った顔と金だけは持っているその弟と恋仲になることになった。 オーナーは仕事も出来るし顔もいい、オマケに金も地位も何もかも持っている。そんな未婚の男性を狙う女なんて、腐るほどいた。ただ、馬鹿な女が、オーナーと弟を勘違いして、腹いせに自分を殺しにくるだなんて、誰が読めただろう。 ナイフが振り下ろされて、ああ、ここまでかと思った。私が死んで、オーナーはこんな馬鹿な女と無能な弟に人生をめちゃくちゃにされるのか。そう考えると、腹が立ってきた。気づいたら女のナイフを奪っていた。私が人殺しになっても構わない。ただ、あの人が幸せに暮らしてくれれば、それで。 目を瞑って、ナイフを構えて女の心臓目掛けて走り出す。手応えを感じた。女の叫び声。再び瞼を開くと、逃げ惑う女が咄嗟に盾にしたであろう、騒ぎを聞きつけて飛んできたオーナーが、ナイフに突き刺さっていた。 無能な弟はこういう時だけ冷静で、女に罪を被せてどこかへ飛ばした。殺したのは私だ、って言っても、無言で頭を撫でるだけ。腹立たしい、弟も、あの女も、目を閉じてしか人を殺す勇気のないこの自分も！ それからは肉親である弟がカジノを継いでいる。権限だけは彼が持っているが、実際にカジノを経営しているのは自分だ。中心で魅惑のダンスを踊りながら、客に目を光らせ、時には制裁を下す。あの人が、私の、好きだったあの人が作りたげたこのカジノを、私は守り抜く義務がある。だから今日も私は舞い続ける。胡蝶の夢を模したこの不夜城で。 ・オーナー(故) 影膜 敏螂(かげまく としろう) 死んだ。 ・現オーナー(無能な弟) 影膜 翅螂(かげまく しろう) 職業:遊び人なのでキャラ化したら無駄な技能ばっか持ってる。顔がいいので馬鹿でも困らない。腹立たしい。 【オレンジゲーム/HO5】 生還 「あなたのおかげで前を向けたわ、ありがとう」 それが誰かの呪いになったとしても、私はまだ生きるわ。 ごめんなさい、――さん、――くん。 わたしは自分の傲慢のために、あなたたちを踏みしめて前に進むの。 *☼*―――――*☼* 髪は切った。 娼婦だった美しい母親になれたらあの人に振り向いて貰えたんじゃないかと思って、髪は女の命だってその言葉を信じて伸ばしていたけど。過去を見ないようにするのはやめたから、私としてきちんとケジメをつけないと。 短く切りそろえた髪で翅螂の家に真実を伝えに行った。 ｢あなたたちの大切なお兄様は、私が刺しました。私も裏に生きる人間です。ケジメはつけさせて頂かなければなりません。翅螂さんとの婚約は破棄させてください。私の命がお兄様のものとつり合うなんて思いませんが、自由に使ってください｣ 三指をついて頭を下げる。 ｢知っていましたよ｣ ｢……え？｣ ｢翅螂から全て聞きましたから。今更婚約を破棄だなんて、それこそアナタの我儘でしょう。アナタは翅螂の光なんです。命を自由に使ってと仰るなら、どうか、息子のために使ってやってくださいな｣ ｢……そんな｣ せっかく前を向けたのに、翅螂、アンタは私に罰もくれないの。私だけがこんな風に生きているのに、私が傷つけてしまった人達への罰を、受けさせてくれないの？ *☼*―――――*☼* ｢罰が欲しいだなんて強欲だねえ。それで許されたいと思ってるわけ？｣ ｢……｣ ｢蝶覇、お前はおれの傍で、一生罪を背負って生きていくの。やったことは消えないんだから、前を向いて生きていくしかないんだよ。罰なんてあげるわけねえだろ？｣ ｢翅螂、私は｣ ｢お前のことは一生許さねえよ。それで、一生お前が好きで、一生お前を愛し続けて、一生おれと一緒にいるの。周りが見えるようになったんなら、気づいてよ。お前はもう籠の中にいるんだよ｣ 所詮私はただの蝶。昔からずっと誰かの所有物で、それが私の生き方なのかもしれない。 *☼*―――――*☼*――――― 【夢のきわにて】(2020-1-11) 「またあいましょう愛おしい人の子」 「忘れないで　覚えていて　この世界はかなしくてつらいこともいっぱいだけど」 「やさしいものもあるってこと。」 そうね、そうよね。そんなの知ってるわ。 だってもう、たくさんやさしさをもらってるもん。 ねえ、またあなたにあったら、わたしは謝れるのかな。 【テンボウカルマ】（2020-1-11） 不定(5[5]) → 〈被害妄想〉…他人が自分を騙そうとしている、害そうとしている、毒を盛ろうとしているといった信念。心理学技能の結果は常に最悪の結果になる。(五週間) どんな言葉を言ってもあなたには届かない。分かっているのだ、理解しているのだ、なのに。あなたを信じてあげられない自分が悔しくて、許せなくて。 だから待っていて。絶対に、いつか必ず。あなたを、助けてみせるから。 *☼*―――――*☼*――――― 手首には消えない傷。 この傷の痛みを忘れるころに、あなたに会いに行きます。 … もう傷は消えないし、貴方にそんな表情をさせてしまった罪も消えないんだけど。 罪は罪のまま、いつまでも消えるわけなんてないんだけど。 それでも貴方を信じているよ。それだけ言いたかったの。本当よ、ねえ、あの時はありがとう。 また一緒に遊びに行こうね。 *☼*―――――*☼*――――― 【誰がウサギを食べたのか？】(2020-3-4) 救ってもらったの。こんな私を丸ごとぜんぶ、信じてくれたのよ。 あなたは私だから、って言うけれど、いつかあなたがあなたの魅力に気づけたらいいなって思うわ。 それをするのは私じゃないけれど。いつかまたあなたと出会った時、一緒に遊んでくれたら嬉しいな。 【仰ぎみる遡行】(2020-4-29) 「私はこの世界で生きている、あなた達とは違うこの世界で！作りものなんかじゃない！馬鹿ね、アンタも。そんなことも分からないの？」 「大切な人も幸せな思い出も嫌な出来事も全部全部私だけのものよ。勝手に憐れんで自己満足するのはやめて」 「ワガママなの、私！」 【化物(ﾋﾄ)になりたかった人(ﾊﾞｹﾓﾉ)】(2020-11-5) 「誰がなにかなんて最初から！」 「最初から決まってたら、私達、何にもなれないわ！！」 私達、とってもワガママなの。全てを救って、みんなで仲良くなりたいの。 ねえ、前を向けた？ 【幸せの国】(2020-12-5) 後ろ向きでもいいんじゃない？ だって、隣で一緒に歩いてくれる人がいるなら、一緒にいてくれるなら。 それって私たちにとっての進む道なんじゃない？ 「失うのは、怖いよね」 「……でも、もういいよ、もう、いいよ……」 ごめんねができただけで、もういいんだよ。

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