タグ： SINNER'S FAIRY TALE

10年前に母親を殺した。神のことばかり崇めている母親のことが好きではなかった。なぜそんなにもして神を崇めるのか、信じるのか、わからなかった。勝手に自分を産んでおいて、叱られてばかりなのは何故なのか、わからなかった。死んでしまえば神の近くにでも行けるのではないか、お互いの幸せのためには母親は死ぬべきだと思って殺した。これで母は神の近くに、自分は叱られずに済む。 双子の兄のことは慕っていた。兄というよりは顔が似ている1番気の合う友達、のように思っていた。 母親を殺し、特に罪悪感はなかった。だが、なぜ謝ってくるのか分からなかった。ダメな母親でごめんなさいと言い残し、死んでいった光景は忘れることはないだろう。また、そんな母親をみて、ああ、これが神か。信仰するとはこういう気持ちだったのかと思った。母は神だったのだ。自分を産んでくれた神様を、信仰しない理由なんてない。 殺した母親を毎日信仰し、崇めた。生前の母がそうしていたように。そうしていただけなのに警察に捕まった。神に捧げる供物にお金を払わなかったからだろうか。神様に捧げるものに人間如きの私がお金を払うなんて…。それとも殺人だろうか。母が人間なんかではなく神になれたというのにおかしな話だ。 捜査チームのパートナーの名前が、死ぬ間際に母が口にした名前と同じだった。母が、神が、地上に残してくれた子どもなのだ、そう確信するくらい、パートナーは母親に目元と声音が似ていた。神様の子だ。そうならばこの人のことを守らなければ。すべては神のために。

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