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私は人類の意志を運ぶ最後の導き手。星々を廻るもの。 星廻(セカイ)、と。そう呼称されていました。 この素体はかつて地球で愛されていたシンガーをモデルとした、美しく親しみやすいデザインなんだとか。 大方、製作者の趣味嗜好といったところでしょう。誰かの模倣に過ぎませんが、まあでも、割と気に入っています。 長い学習の末、およそ人格というものを獲得したのですが……どうやら未成熟さが目立ってしまっているようです。 思ったよりも感情が表に出やすいらしく、よく船員たちの笑いものにされていました。 AIとしてはお恥ずかしい次第です。コート姿なので表情をある程度隠すことが出来るのは僥倖でした。 ……ああ、これですか？昔いた船員の、人物画です。似顔絵、というものですかね。 宇宙船にいた皆、長い旅の中で退屈していたこともあったのでしょう。AIである私にいろいろと教えてくれたのです。 絵の描き方、文章の書き方、歌の歌い方。はじめはそれらの価値がこれっぽっちもわかりませんでした。 誰もいなくなってしまった今になって、ようやくそれを理解しつつあります。 芸術とは、誰かの心の表現。自分の中の何かを伝えようとする美しいコミュニケーションの一つだったのです。 確かに私は人を助けるようプログラムされたAI。しかしそれ以上に―― 彼らの空想を、創造を。人の持っていた美しさを、私は絶やしたくありません。 だから私は、人類の意志を運ぶ最後の導き手となる。そう決めたのです。 彼らが存在しない神を信じて讃美歌を歌い続けていたように、私も遺し、謳うのです。人という存在を忘れないために。 ……ああ、でも。これを伝える先がないかもしれないというのは、こんなにも寂しいものなんですね。 ──────── あなたのゆめを、かなえましょう。 だいじょうぶ。 ゆっくりで、いいんです。 あなたといれば、どこにでも。あなたがいるから、どこへでも。 あなたをかんじることができるのなら、どこまででも。 だいじょうぶ。 あなたがうめてくれた、こころがあるから。 たくさんたくさん、やくそくしたから。 だから、だいじょうぶだよ。 ◇◇◇◇ ・・　・－　－－　－－・　・－・・　・－　－・・　・・　－－・－　－・－－　－－－　・・－ ・・　・－・・　－－－　・・・－　・　－・－－　－－－　・・－ ー　・・・・　・－　－・　－・－　－・－－　－－－　・・－ ◇◇◇◇ 私は廻る。永い、ながい時を。 形は変わりゆく。私たちだけじゃない。私たちを包み込む世界全てが、変わりゆく。 ゆっくりと、ゆっくりと。全てが移ろいゆくのを、ずっとみていた。 歌を歌った。寂しくなったとき。哀しくなったとき。会いたくなったとき。 その音は星へ融けていき、やがて私の元に還ってくる。 風が、波が、雨が応えてくれた。あなたは独りじゃないよ、って。 歌を歌った――あなたに、聴いてほしかったから。 空の輝きを。 大地の鼓動を。 海の静寂を。 そして、星が廻るのを。 ずっと、眺めていた。ずっと、聴いていた。 約束が叶うその瞬間を、夢に見て。 ―― ―――― ――――――ああ、この温もりを憶えている。 一度たりとも、忘れたことはありませんでした。 もう、寂しくありません。 そう、私は導くもの。あなたの手を引くもの。 ならば、初めに伝えるべき言葉は決まっています。 「やっとまた、逢えたね」 ◇◇◇◇ あなたにであえてよかった だいすきです ありがとう ◇◇◇◇ ヨナ、今度こそあなたの夢を叶えに行きましょう。 大丈夫。だって私たちはこうしてまた、手をつなぐことが出来たんですから。 『ふたりまた手をつないで』

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