タグ： 白飯同居人

浅見 さと (36) 元スタントマン 五感が優れており、運動神経抜群だった。 運動能力を活かすためにスタントマンになった。 とある撮影のスタッフだった浅見扇壱と意気投合しそのまま恋仲になり結婚した。 2人の夫婦としての生活は順調に進み、さとのお腹には1つの命が宿っていた。 妊婦になってからはスタントマンの仕事もやめ、家事に専念している。料理はあまり上手とは言えないさとに対してじゃあ一緒に料理しようかと言ってくれる扇壱の事を心から愛していた。 だいぶお腹も大きくなり、出産予定日まで数週間。さとの陣痛がくる頻度も高くなり調子の悪い日が続いていた。 その日は断然に調子がいい日だった。 いつまでも心配して仕事に行こうとしない扇壱の背中をバシッと叩き見送った。今日は少し調子がいいから頑張って料理を作ってあげようと思っていた。 その日から扇壱は帰ってこなかった。 警察に連絡し、捜索が始まった。 どうか、無事で。 神に願うしかなく日に日に食事が喉を通らなくなり、家事をする気力も無くなった。 ゴミが溜まり、埃が積もる。 左手の薬指に鈍く光る指輪、それを手ごと握り込み静かに涙を流しながら眠る日々。 彼女はもう限界だった。 ある日、浅見家にひとつの荷物が届いた。 宛先の名前は浅見さと 送り主は 田中 太郎 クール便で届いたそれは嫌に冷えていた。 緩慢な動きで箱を開ける。 中には扇壱と思われる左手。薬指には自身と同じサイズ違いの指輪がキラキラと輝いていた。 喉から引き攣るような声にならない悲鳴が首を絞めていく。さとはふっと意識をなくした。 目が覚めると病院だった。 悲痛な面持ちで医師から伝えられたのは、夫は恐らくもう亡くなっていることそして、多大なストレスと倒れてしまった時の衝撃でお腹にいたはずの我が子は流産してしまったという事。 ああ、神などいないのだと願っても無駄なのだと。 さとは、自身の手で夫を子供を奪った犯人を見つけださなければと固く誓った。 だが、さとには推理小説に出てくる人物のような賢さなどなかった。彼女にあるのは類稀な運動神経と五感の鋭さだけ。小さな事件でもなんでもいい、分からないのなら数をこなして少しづつ情報を集めるしかない。その為に今まで貯めてきた資金と夫の保険金を元手に探偵業を始めた。

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