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羽星市という中核市に住んでいる30代の男。 私立探偵を務めており、仕事は全うにこなす。 といっても、探偵の本業を担っているのは角隈冬華(つのくまふゆか)のほうで、自分はその手伝いをしているだけである………のだが、実際の所の力仕事なり何なりをしているのは勝六のほうである。 冬華の方と言えば事務仕事を多めにこなしているためギブ＆テイクと言えなくも無いのかもしれない。 しかしながら別に仲が特別悪いという訳ではないのだ。仲睦まじい――――時には夫婦と知り合いに揶揄われるほどである。 ―――実際。勝六には冬華に返しきれない恩がある。 数年前のとある大震災にて、倒壊したビルの瓦礫の下敷きになったのを救出したのは冬華である。 なにも覚えていない、なにも思い出せない勝六に〝勝六〟という名前をくれて共に探偵をさせてくれているのは他でもない冬華の計らいである。 彼女には何か自分に思うことがあるのかもしれない。 自分を助けた何かしらの理由があったのかもしれない。 過去に彼女となにがあったのか、何もなかったのか。 ―――ただ今は、彼女といる幸せを噛み締めていたい―――

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