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平和主義者。争い事が得意でない、というよりも苦手。 ここ数年恋人はいない、というか作ることを避けている。 一族が経営している医療法人社団「福地会」の傘下の病院勤務の整形外科医。 物腰穏やか。見目の良さも相まってスタッフからの人気は高い。 優しいと評判だが、それは他人への期待がないことの裏返しである。 金や権力に全くもって興味がない。医師になったのは親族に医療従事者が多く、彼にもそうあるように求められていたから。決して彼自身の意志によるものではない。 医師の父をもつ。お前は何れ福地会を継ぐことになるのだと幼い頃から言い聞かせられて育った。過度な期待をおしつけられるのに慣れはしたが、だからといって息苦しさを覚えないわけではなかった。現在の福地会の理事長には父親の弟である彼の叔父が就任している。叔父には同じく医師の道に進んだ子供がおり、彼としてはそちらの彼が継げばいいじゃないかと考えている。が、自分を差し置いて理事長になった叔父にコンプレックスを抱いている父親は頑として息子を就任させると言って聞かない。母親は箱入りのお嬢様気質の人で、父親との結婚は親同士がセッティングしたものであった。お世辞にも賢いとは言えず、見栄っ張りで我儘気質のおよそ手に負えないタイプ。癇癪を起こした時の母親のキンキンとした叫び声が彼は一等苦手であった。また、最近になって早く結婚して子供を作れとよく言われるようになり、見合いの話も持ち込まれていた。 そういった実家でのゴタゴタに嫌気が差していた彼だが、ふと、この窮屈な場所から逃げ出したいと唐突に思った。そこからの行動は早かった。無理矢理休業期間をもぎ取り、家に暫く留守にするという書き置きだけ残すと、必要最低限のもの(+飼い猫)のみ持ち出して逃げるように405号室に越してきた。それが数ヶ月前のことである。両親やその身辺から連絡が来ることを見越してスマートフォンの電源は落としている。こうして実家から抜け出してきたのはこれまでの人生で初のこと。生まれてはじめての大掛かり反抗期......というよりも、ほんの一時の現実逃避に近い。後先考えずに行動したため、この休業期間を終えた自分がどうなるのか、どうしたいのかは全く考えていない。 現在住むアパートは下見した際にこじんまりとしていて落ち着くのではないかと考えての電撃入居だったが、隣人が喧しかったり自殺未遂してみたりで予定外に騒がしい日々を送っている。 目の前に横たわる跡継ぎ問題から目を逸らすだけではどうしようもないと理解しながらも周囲に逆らうことなく生きてきた。体裁を保つのが上手いのが災いしたのか、苦しんでいるにもかかわらず誰にも縋ることができずにいる。虚勢を張っているともいう。そもそも、彼には縋ることができる相手はいなかった。作る機会はあったのかもしれないが、幼い頃からの刷り込みにより縛られていた彼は気づくことができなかった。 飼っている猫はマンチカンの女の子。名前はあずき。現在6歳。彼の唯一の逃げ場でもある。 誕生日は3/19 ｢はい、本日はどうされましたか｣ ｢権利がなんだ遺産がどうこうと…よくもまぁあんなに頑張れるものだね。......僕にはわからないよ｣ ｢はい、お父さん。異論ありません｣ ｢大丈夫。私は貴女に逆らいませんよ、お母さん｣ ｢ねぇあずき。どうしてみんな、そんな地位なんてものに拘るのかな。そんなものに執着したところで、死んだらみんな一緒だっていうのに。何度も目にしているんだからわからないはずがないのに......はぁ｣ ｢優しい？はは、私はそんなにできた人間ではないですよ｣ ※以下シナリオネタバレ ・406号室の隣人(2022.04.24) ・とらつぐみの夜に(2022.05.04) 不定の狂気：一時的偏執症(3ヶ月) ・ダルマの柩(2022.05.10)

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