タグ： 白百合の殻

清く、正しく、美しく。久媛学園の清花生として全生徒の模範たるべく、品行方正な学生生活を過ごしている少女。また私生活に於いても同様に、名家の息女として恥じない振る舞いを心掛けている。 蘇芳家は旧くから存在する財閥の当主を務め続けており、現当主を担う父親は財閥による影響拡大への野心が殊更強く、血の繋がった我が子ですらその為の駒としか認識していない。母親は生まれつき心臓に病を患っており、日頃から入退院を繰り返していることから交流は最低限のもの、と制限されている。また、実苑には兄が一人居るものの父親の影響を強く受けて育った為、妹に対して何の興味も抱いていない。 幼少期こそ家族の愛情を求めて学業や、息女としての立ち居振る舞いを習得すべく励む実苑であったが、何時しか『どう足掻いても望む物は得られない』こと、『自分の将来は既に定められており変えられない』ことを悟る。それでも蘇芳家息女として道を踏み外さずに居られたのは、ひとえに久媛学園あってのものに、他ならない。 清く、正しく、美しく。今まで誰にも認めてもらえなかった自分が此処では認められ、正当に評価されるのだ。今の実苑は『努力の結果、清花生の地位を得た』よりも、『自身の存在意義を確かなものにする為に清花生としての地位を利用している』に近いだろう。 愛される喜びや『愛おしい』という感情を知らない実苑が、姉妹関係を自身から持ち掛けることは先ずない。五条宮ゆかり、藤田葵、小波紗代との関わりも常に一線を引き、住む世界が違う人間であると自身に言い聞かせることで、心の奥から湧き上がろうとする『何か』を押し込めている。 現在姉妹関係を結ぶ彼女について、周囲の圧力すらも跳ね除けて慕ってくれる天真爛漫さには憧れに似た感情を持ちながらも、何れは彼女もまた自分の元を去り在るべき居場所へ帰るのだ、と嫉妬にも似た複雑な思いが過ぎることがある。 蘇芳家息女の嗜みとして、幼少期から薙刀を習っている。腕前は可もなく不可もなく。これは才能や努力云々よりも『嫁入りしてしまえば必要ないもの』と、実苑自身がそれ以上の努力や変化を諦めていることに起因している。

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