タグ： ふぁいと犬

母子家庭の長男。 妹が居る。妹の名前は二（に） 父親は知らない。気づけば母親が居て、妹が居た。 名前から解る通り生むつもりのなかった必要のない人間として扱われた。 金が掛かるから殴られた。愛想が悪いから殴られた。声を発したから殴られた。目に映ったから殴られた。結婚できないのも仕事がうまく行かないのもお金が湧いて出ない事も。全て殴る理由はいかようにも。 泣く妹を母親がぶって、それを庇う日々。傷が出来る毎日は変わらない。傷を治す事に皮肉にも慣れてしまった。 バイトをしている時間があれば妹が殴られる回数が増えるかもしれない。 だから勉強するしか無かった。頭が良ければ学費免除だって奨学金だって取れる。 頭が良ければ注目される。母親を前にすれば何も言えない彼が抵抗できる最後の足掻き。死ぬ気で授業中に頭に叩き込んだ。無理矢理部活に入らなければ行けないのなら、図書委員に立候補した。図書館で幾らでも勉強できた。 夕方になりチャイムが鳴れば急いで走って妹の学校まで迎えに行く。1人で帰ってしまえば守れないからだ。 小学生のあの子は何故か待たない。1人で母親にまた甘えようとする。 毎日何かに追われていた。何かに押しつぶされるように走り続けるしかなかった。では自分の時間は？　自分のしたいとはなんだ？　恋とか青春とか夢とかなんだそれは？ そんな事を考える必要は無い。守らなければ。

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