タグ： びすく家 大鷲組

大鷲組という極道組織お抱えの闇医者。 あまり自分の多くを語ろうとせず、いつも穏やかな笑みを絶やさない。元々はそれなりに大きな病院の脳神経外科医だったらしく、医療に関する腕に間違いはない。大なり小なり生傷の絶えないこの場でも、患者の話を聞きながらたちまちに治してしまう様子は、この組織の安息の地であり、さながら学校の保健室を思わせるような雰囲気さえ纏っている。　 = = = = = = = = = = = = = = 幸せな人生だった。可愛い子どもに優しい妻、何も不自由な事なんてなかった。長い夜勤が続いても家に帰れば暖かい食事が待っていて、子どもの楽しそうな笑い声が響く。この風景がずっと続けばいいと思っていた。 幸せには終わりが付き纏う。それを改めて認識したのは紅葉が紅く盛る日の夕暮れ時だった。 仕事終わりに駆けつけた時にはもう遅かった。そこにあったのは動かなくなった妻の身体と、どこからが身体なのかも分からない息子の姿。 後悔を、した。何よりも大切なものを守れなかったことに。大切な存在を治せないことに。自身の無力さに。もう戻せない、もう戻らない。人間の力では。 …ならば人間でなければいいのでは？ 思えばあの時から壊れていたのかもしれない。やつらと交流を持ってしまったあの日から。結局、人類がもつ知識が及ばない力を使ったとて、自身が無力なことに変わりはなかった。あんなに慣れない嘘をついて、あんなに実験も繰り返したのに、いざその結果を目にしたら足がすくんだ。 選択も出来ず、全てを諦め途方に暮れていた時に、彼に拾われた。彼は深くは聞かずに缶コーヒーを一本こちらに渡し、こう言った。 「ウチに来ないか？」 私は、半ば反射的にその手を、取った。 = = = = = = = = = = = = ・組員が来る度にお茶菓子を出して話を聞いてくれる。他の人の相談に乗るのは得意だが、自身に関する決断をするのは苦手。 ・闇医者なのである程度の処置はできるように機材の用意がしてある。自身の専門分野しか分からず即座に対応ができなかった後悔から勉強した節がある。 ・よく使っている部屋には手術道具なども含めてたくさんなものが置いてあり、その奥にはまだ諦め切れていない息子の脳もある。 ・下手ながらも家族写真を撮るのが好きだった。現在も部屋に一眼が置いてある。

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