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欲望:人間を知ること 「君はどういう顔をして消えていくのかな？」 　 　FHセル、"マーダーインク"に所属しているマスターエージェント。 　 　生まれた時から孤児院で真っ当に育てられていたのだが、ある時にシスターたちが毒虫を殺している光景を目撃したことがきっかけで狂気性を現す。毒虫を殺す理由を聞いた翌日、彼は孤児院にやってきた野犬を殴り殺した。次の日は猫、次の日は鴉。終いに孤児院を追い出されたのは、彼が孤児院に入ってきた酔っ払いを殴り殺した時であった。 　彼は殺すたびに何故咎められるのか理解できなかった。何故、子供らが自分に怯えているのかが分からなかった。 　彼にとって、人間も鳩も犬も蠅も同じものとしか思えていなかったのだ。 　その後、ギルドの小組織"レストラン"で無銭飲食を働き、使い捨ての駒として殺しを行った時にこの精神性から殺しの才能を見出され、レストランの始末屋として十数年務める。血で血を洗うギルドでの日々も、彼は少しも摩耗することなく衣食住を得るためだけに殺しを続けた。 　時に、彼は一度生死を彷徨った経験がある。本人はその原因を忘れた。どうでもいいから。 　ただ、息を吹き返した時、彼は自分の容姿が20年近く先のものに代わっていることに気が付く。これがオーヴァードとしての覚醒であった。 　その後も変わらずギルドで仕事を熟していたが、師として慕っていた男の死と、コードウェルと名乗る老紳士との邂逅を機にFHへと轡替えする。 　理由は、FHの方が気前が良かったから。それに、老紳士からは蠅たちとは違う何かを感じたから。当時は、それは本人の直感であって核心ではなかった。 　 　FHでも変わらぬ日々を送っていた当時、彼はとある人物から実験体二人の処理を依頼される。フランケンシュタインと吸血鬼、その成り損ないだ。 　老紳士から与えられた黒色の外套を身に纏い、仕事に出掛ける。そして、普段通り実験体を始末する――はずだった。 　 　吸血鬼の成り損ないを逃がす為に囮となったフランケンシュタインの成り損ないを始末する瞬間、力によって砂に代わっていくそいつが安心しきったような笑みを浮かべたのだ。 　その笑みが、彼には分からなかった。今まで同じように殺していった誰も彼も、こんな顔はしなかった。砂に代わる恐怖に喘ぎ、命乞いをする者ばかりなのに。ギルドでの仕事の時でさえ、こんな顔をして死んでいった人間はいなかった。一体何故だ――。 　その出会いによって、彼は一つの欲望を抱く。 　人間を知りたい。もっと、他者の苦しみも幸せも哲学も何もかも、その結末がもたらす表情が、見たいと思った。 　その後、同胞殺しを専門に行うFHエージェント達を集めたセル"マーダーインク"に所属。磨きのかかった殺しが周囲のエージェント達に畏怖され、マスタークロックの称号を得る。 　今日も男は裏切者たちの最期に見せる姿を見るために嬉々として彼らを始末する。 能力 ・時間操作能力 　マスタークロックの称号を与えられた所以は、彼が時間を操る力に長けている為である。時使いと呼ばれるオーヴァードたちもいるが、彼の操る時間は時という概念に干渉するものではなく、バロールシンドロームを発現した対抗種のレネゲイドウイルスが対象のレネゲイドウイルスの時間を加速させることで死滅させようとする性質である。 　本来、《時の魔術師》は抵抗のある生物に対して干渉することができないのだが、対抗種としてのウロボロスシンドロームによってレネゲイドウイルスの性質を急激に弱体化させることでその抵抗を著しく削ぎ落し、《時の魔術師》の影響を与えることができるようになっている。 　彼ができる時間操作は加速、停止、巻き戻しの３つ。 　加速は、上述の時の魔術師の力を強化し、肉体の老化・風化を発生させる。 　停止は、ウロボロスシンドロームの力とバロールシンドロームの力を組み合わせることでレネゲイドウイルスの機能を完全に停止させる。時間を操っているようで操っていない。 　巻き戻し、ウロボロスシンドロームで模倣したアクアウィターエの力なのだが、精髄を与えて回復するというより対抗種としての本能を刺激することで回復能力を急激に上げるという荒業である。 　 　彼がオーヴァードに覚醒した際、生死を彷徨ったのは対抗種、ひいてはオーバーカウンターという強力な対抗種の力を得たため。 　現在も、肉体の老化・風化が相当な速度で進んでおり、30代であるはずなのにその容姿は50代の初老の外見となっている。 　 ・魔眼 　魔眼によって、上述の時間操作を行う。この魔眼にはウロボロスシンドロームで作り出された影も内蔵されており、自身の周囲を巡らせることでエフェクトによるダメージを大幅にシャットダウンできる。 　また、敵に攻撃する際、この浮遊した魔眼を拳銃に装填して撃ち込む。コードネームのシルバーブレッドはここから付けられた。

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