タグ： 朝雛氏DX α世界線

地獄だった。 私は獣として生まれた。 母は私を産み落として半狂乱になった。 父はそんな私を気味悪がり、放置した。 祖父母は暴力を振るい、口の軽いナースが垂れ込んだ情報でマスコミが押し寄せた。 そんな日々についに両親は壊れた。 私の事を人だと思い始めた。 ペットが自分を人だと勘違いするという話は有名で、真実だ。 おかげで私は「ひと」になった。 人になって最初に、悪意を知った。 無遠慮な視線、言葉、感情。 煩わしい者を、煩わしいという感情そのままに殴り、牙を立て、喰らう。 これが私の離乳食、非常に不味かった。 ここは、私の居場所にはならなかった。 居場所が欲しい、私が私でいられる場所が。 有名になりすぎたんだろう。 FHに目をつけられ、支えの両親は四肢を喪いFHの施設で生かされている。私は記憶処理をされて新しい両親を宛てがわれた。 新しい両親は無償の愛を私に向けてくれた。 わたしにとっていばしょはここだった。 しあわせだった。 なんて、馬鹿馬鹿しい。 私が悪意を見逃すとでも思ったのだろうか。 忘れるとでも思ったのだろうか。 それからも地獄だった。 バレてはいけない、愛されていなければならない。母が死んでしまう。父が殺されてしまう。 居場所が地獄に変わった。 私の存在が楔だった。 瞼を閉じれば、いつでも両親に会える。 腕を失い、依然として私に笑みを浮かべる愛すべきパパとママが。 UGNへの潜入任務は、私のバディだった人の仕事だった。 ｢特別任務に選ばれたんだってね。おめでとう、◆◆◆。｣ ｢ありがとう！これも葛葉が今まで手伝ってくれたからよ。｣ ｢ええ、そうよ。あなたみたいな雑魚が今まで死ななかったのは、私が今まであなたと共にしていたから。だから私がその恩恵を受けるべきだと思うの。｣ ｢…え？｣ あなたには『FH』っていう居場所があるじゃない。…だから、私に、頂戴？ 煩わしいだけで殺す今までの私はもう居ない。 私は狐(Fox)、狡猾さが大事なの。 トツカが同胞の血に濡れた時。ふと目を閉じてみた。何も見えない。暗闇だった。 笑みが零れた。 理由は、分からなかった。 分かりたくも、なかった。 任務中に死んだバディの代わりに、任務を遂行したいと涙ながらに訴え、一時的にではあるが私はFHを抜けた。偽りの愛すべき両親は迫真の嘘泣きで私を見送ってくれた。 失敗すれば私は殺されるだろう。 人とも化け物ともつかぬ、UGNともFHともつかない。 そう、私こそが『裏切り者(ダブルクロス)』。 どうしたって死を待つだけの背徳者。 ■A fox is Not caught Twice in the same snare 狐に二度同じ手はきかない。 もう、間違えない。 一度目は、何？

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