タグ： 永い後日談のネクロニカ

「記憶のかけら１：４６尾行者」 死ぬ前にあった記憶は黒い影。なにかどろりと暗いものがいつも私の影を踏む。気が付けば、それは絶望的なまでに大きく膨らんでいた。おぼえているのは、窓に、窓に。ああ、正気がほどけていく音。きっと私は狂ったのだ。それは過去の大戦の遺物だったのか、古来より続く深淵じみたなにかだったのか分からない。ただ、私はきっとしくじった。だからひとであることを諦めたのだ。そのままでは道満のことも分からなくなってしまうから。 「記憶のかけら２：８８兄」 兄。双子の兄がいた。いつも一緒にいたのに姿も名前も思い出せない。あの人以上に大切な人などなかったのに？……道満以上に？道満以上に大切な人なんていないのに。おかしなことをいう。私に兄なんていただろうか。でも、いたのだ。思い出せない。ああそうか、私はおかしくなってしまったから、きっとどこかで記憶が食い違っている。あれは、誰だ。 「記憶のかけら３：最後の記憶」 「まあ道満なら完全に成しえてくれるだろうからね。私が完全におかしくなりきるまえに、おまえとのことを大切に残して生きたいのさ」 「そんなに生きたいのですか。こんな荒廃した世で」 「おまえがいるなら退屈はしまい？」 「人を辞めるのですよ」 「どうせこのような世で生きながらえている者すべて既にひとではない、それはおまえも感じているのだろう」 「どうしても、ですか。拙僧気が進みませぬが」 「おまえでないと信頼がおけないよ。私やおまえほどに優秀なネクロマンサーがいるとでも？おまえだって、私を他の者に触らせるのはいやだろう？」 「仕方のない人です」 「ではね、次に目覚める時に見るのはお前の顔なんだろう？」 「知りませぬ、莫迦なひと」 暗示「反転」 道満が手に入るなら姉妹などいりませんよ。裏切り？反転？なんのことやら。だって、私は私だけの道満を取り戻すためにここにいるのですから、そのほかの何もかもどうでも良いことでしょう。私は、常に私の心を裏切らなければ、それで良い。たとえ他のネクロマンサーにこうべをたれることになっても、それが私にとって有用であるならばたいした相違はないのです。ええ、そうですとも。 ポジション「ジャンク」 今道満はいません。ええ、今だけです。分かりました。私が先に逝ってしまって、先に起きてしまったのですから、仕方ない。道満に起こしてもらうはずだったのですが、何かあったのかもしれません。でも、大丈夫ですよ。私がこうしてここに立っているのですから。道満を探しに行けばいいのです。私の道満を探しましょう。 たからもの「アクセサリー」 ああこれですか？綺麗な緑の石でしょう。これと同じものを道満ももっているのです。あちらは紫色の石です。互いの好きな色を交換してつけているのですよ。そうすれば、あれが誰の物かすぐに分かりますからね。

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