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クトゥルフ PC作成ツール
申夏刎 梓前左衛門(さるかばね しぜんざえもん)
ID:4297023
MD:9b74a861f7141dcbca6d78b39f4e9180
申夏刎 梓前左衛門(さるかばね しぜんざえもん)
タグ:
羊PC
庭師は何を口遊む
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生まれ・能力値
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その他増加分
一時的増減
現在値
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CON
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APP
SIZ
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初期
SAN
アイ
デア
幸運
知識
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SAN
現在SAN値
/
(不定領域:
)
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技能
職業P
/
(うち追加分:
)
興味P
/
(うち追加分:
)
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初期値の技能を隠す
複数回成長モード
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<戦闘技能>
成長
戦闘技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
回避
キック
組み付き
こぶし(パンチ)
頭突き
投擲
マーシャルアーツ
拳銃
サブマシンガン
ショットガン
マシンガン
ライフル
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<探索技能>
成長
探索技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
応急手当
鍵開け
隠す
隠れる
聞き耳
忍び歩き
写真術
精神分析
追跡
登攀
図書館
目星
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<行動技能>
成長
行動技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
運転(
)
機械修理
重機械操作
乗馬
水泳
製作(
)
操縦(
)
跳躍
電気修理
ナビゲート
変装
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通常表示
<交渉技能>
成長
交渉技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
言いくるめ
信用
説得
値切り
母国語(
)
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<知識技能>
成長
知識技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
医学
オカルト
化学
クトゥルフ神話
芸術(
)
経理
考古学
コンピューター
心理学
人類学
生物学
地質学
電子工学
天文学
博物学
物理学
法律
薬学
歴史
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戦闘・武器・防具
ダメージボーナス:
名前
成功率
ダメージ
射程
攻撃回数
装弾数
耐久力
その他
%
%
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所持品・所持金
名称
単価
個
価格
効果・備考など
価格総計
現在の所持金:
、 預金・借金:
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パーソナルデータ
キャラクター名
タグ
職業
年齢
性別
身長
体重
出身
髪の色
瞳の色
肌の色
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その他メモ
警視庁特殊犯罪捜査零課、通称楓山班に所属する刑事。階級は警部補。 黒髪ボブに太めの麻呂眉、日本人的な涼やかな顔立ちと、全体的に和風の雰囲気が漂う男。しかし顔の半分を生まれつきの痣で覆われているため、それらの要素は一見すると非常に分かりづらい。初対面の人間には目を合わせるのを避けられるタイプ。 定位置はチーフの後方。もしくはチーム全体の後方。医学の心得があることもあって、常に誰かの後方に控えてその補佐に回る、全体のフォロー役をしている。 仕事以外でも給湯室にストックされたお菓子をいつの間にか補充していたり、適切なタイミングで各自の好みに合わせてお茶を淹れたり、掃除や書類整理といった雑用をしている。顔の痣のせいで非常に目立つ容姿である筈だが、物静かな佇まいや執事めいた振る舞いから、黒子のように存在感が薄い。大体の事柄はいつの間にか素早く片付けている。何をやらせてもそつなくこなす器用な男。 相手が先輩であれ後輩であれ上司であれ部下であれ、誰であっても変わらず一定ラインの丁寧な態度を取るが、言動自体はクールを通り越して冷徹、ドライで容赦が無い。背の高い後輩が子供に泣かれるのだと泣きつけば「他人に任せるか、這いつくばりなさい(目線を低い位置にしろ)」と平然と言い放ち、チーフが子供と間違えられると言えば「お若い見た目をしておいでですので(見た目が幼女なのは確か)」と、オブラートに包んでも丸わかりの返答をする。 その割には気が長いのか心が広いのか何なのか、例え後輩にぞんざいに扱われたりパシリのように使われたとしても、全く気にしない。呼び捨てにされようが何も言わないし、二つ返事で反応するが、自分から話しかけた時に無視をされると、人違いをしたような反応で相手を探し続けるという、ちょっと嫌味な態度を取る。 名前からしても何となく分かるが、旧家の出身。所作の端々に育ちの良さが伺える。実家では着物を着ていることが多かったとか。 仕事の処理速度などにも反映されているが、何に取り組んでも手際が良くて非常に器用。燃費が悪いので比較的大食漢だが、食自体には興味が薄い。しかし料理をしたり茶葉のブレンド、珈琲豆の焙煎をしたりといったことは好きで、どちらも器用にこなすが量を作りがち。班員を作りすぎた時の処理係だと思っている節があり、給湯室にある茶葉や豆の大半は自分が持ち込んだ物。 零課配属前は警務部訟務課におり、そこで淡々と事務仕事をしていた。当時の上司は決して出来た人間とは言えず、事務処理が得意な申夏刎によく仕事を押し付けており、それに嫌気が差して提出していた転属願いも握り潰していたのだが、零課発足の際に的場によって引き抜かれたという経緯がある。ついでに上司は内部監査に連れていかれた。 今でも決して身綺麗にしていないわけではないが、3年前の庭師事件で同僚の相模原が亡くなって以降、身の周りから装飾品の類が消えている。表面上の態度は変わっていないのだが、今までさり気ない部分にも気を遣う、あるいは飾ることを楽しんでいたものの、水面下ではそういった余裕が無くなったのかもしれない。 彼女に対しては同僚以上に特に親しくしていた訳では無いが、班員全体に対し零課以外の同期・同僚よりは距離が近かったと言えるため、相対的に見て班員だった彼女は親しい相手の一人と言える。彼女の遺体を発見した際は泣き喚くようなことは無かったものの、後方で目を見開いて立ちつくし、応援が駆けつけるまでその場から動けなかった。普段の彼の態度を考えると、それくらいには彼女に対して情があったと言える。 庭師事件に対しては、そこまで積極的に解決しようという姿勢は見えない。が、班員たちがそちらの捜査に割く時間を増やせるようにか、並行して捜査している他の事件の方に積極的に取り組み、率先して片付けている。 25~6 入庁、警務部訟務課へ配属 28 教育係の谷向卯が捜査一課へ移動、パワハラ開始 32 零課へ移動 職業ベース:警官、刑事(クトゥルフ2015) 職業技能:【聞き耳】【目星】【言いくるめ】【説得】【追跡】【心理学】【法律】 職業自由枠:【拳銃】 職業特記:制服の着用、あるいは警察手帳の提示で【信用】及び【説得】に20%ボーナス。ただし何らかの理由で警察に敵意を抱いている相手にはその限りではない。 通過シナリオ ・庭師は何を口遊む ・亡心の花導(KPレス) ・空白の航海(KPレス) ・フルダイブエスケープ ・シルバーバレットは不死の夢を見るか? ・ブラックボックスブレイン(KPレス) 庭師は何を口遊む:HO4(PC4) あなたは非常に手際よく、俊敏性に優れている。チーフの補佐等を任される事が多く、医療の心得もある。 DEXを算出する際、+3の固定値が付く。(これは上限を超えても構わない) 以下通過シナリオ秘匿HOのネタバレの設定 HO4(PC4): あなたは非常に多趣味な人物であり、医学的なものから博物学的なものまである程度理解している。三年前の事件より以前は植物を育て、仕事の傍らそうしたものの研究もしていた。 しかし事件後は花に対して強烈なまでの嫌悪感を抱くようになってしまっている。記憶が曖昧で何故かはわからない。 あなたはかつて、今はなき植物研究サークルに自身が育てた花や種を売っていた。そのサークルで殊更熱心に花について勉強をしていた女性が居たのを知っている。名前は「南 玲子(みなみ れいこ)」。 花に興味を失ってしまったあなたは、その女性ともそれきり会わなくなってしまっている。あらぬ誤解をされたくないあなたは、その女性については黙っている事にした。 あなたはPC1の補佐をしつつも、どこかPC1に抵抗感を抱いている。その立場故か劣等感故かあなた自身にも解らない。 ☆あなたはDEX*3ptを<博物学>に振り分ける事が出来る。 ☆あなたはDEXを算出する際、+3の固定値が付く。(これは上限を超えても構わない) ☆DEXが他のステータスよりも低かった場合、ステータスの中で最も高い値になるように入れ替える事が出来る。 ↓ ステータス入れ替え:CON⟷DEX 申夏刎家は、古くからある華道の家元の家系である。梓前左衛門も幼い頃より花々に慣れ親しみ、季節に合わせてそれらを生けることの美しさと侘び寂びを好んで、積極的に華道を学んでいた。齢17にして既にその腕前は師にして現家元である母に迫るほどで、生け花に対する姿勢も華道の名家の人間として相応しく、次に家を継ぐのはお前だと両親や姉はよく言っており、本人もそのように強く自負していた。 しかし、梓前左衛門が18になり、そろそろ本格的に後継を定めると家元が言った時。その場に居た半分以上の親族と弟子たちは、姉を支持した。確かに家元の弟子の中では高い腕前を持ってはいたが、彼よりは明らかに劣る姉を、である。 家元が何故かと問うと、彼らの口から出てきたのは、揃いも揃って姉がいかに次期家元に相応しいかではなく、梓前左衛門が如何に次期家元に相応しくないかという罵倒だった。 曰く、 「こんな見た目の悪い者が申夏刎の名を継ぐなんて冗談じゃない」 「彼の顔を見たら、とてもじゃないが作品を評価する気になれない」 「そもそも彼は人の見分けが付かないのだとか。我々を馬鹿にしているのでは?」 「そんな性根の人間が生けた花に価値があるわけもない。汚らわしい」 「彼が継ぐのならこの家も終わりだ」 その殆どが年若く才能がある梓前左衛門への嫉妬と、申夏刎家の旧体制に端を発する、出る杭を打つ言いがかりであった。元々自分がいい顔をされていないことを知ってはいたが、まさかここまで幼稚にこき下ろされるとは予想だにしておらず、思わず閉口した。自分の言葉は聞き入れて貰えないのが分かっていた、ということもある。 だが、2点だけ、彼らの言葉には説得力がある部分もあった。それは生来の顔の痣と、もう一つ。先天性の相貌失認症であることだった。 梓前左衛門は他人の目や鼻、口といった顔の各パーツは認識できるが、それらを総合した「顔(表情)」を生まれつき認識することが出来ない。それ故、息子のズレを察知した両親が医者に連れて行き症状が判明するまで、彼は人違いばかりする上に他者の感情を思いやれず、更にはその性根が現れたかのように顔に大きな痣があるという、心身共に異常な子供として周囲から扱われていた(言いがかりではあるが、古い家であるが故に迷信の類は存在感があった)。 自分がどういう状態なのか、世間一般と自分がどうズレているのか。それを認識して以降、彼は幼いなりに周囲に適合しようと努力を重ねた。顔以外の特徴を覚えて個人を識別し、人の声をよく聞いて心情を推し量り、周囲に馴染む努力を欠かさなかった。他者に積極的に手を差し伸べるようにもしたし、少し変わっていても容認して貰えるように、成績も優秀であるように努めた。顔の痣だって、自分の顔さえ識別できない彼にとってこれはひと目で分かる自身の証であり、何も恥じることの無いアイデンティティでもあったが、周囲に馴染むために化粧で覆い隠してもいた。 全ては華道を、花を愛しているが故だった。花を愛し、華道の名家たる申夏刎の跡取りとして相応しくあるために、努力を欠かさなかった。他者とは違う己が、他者と同じように美しさを感じ、愛せる対象を、大切に思っていたから。だからこそ、家元である母や同じく華道家としての指導を受ける姉を含む家族は彼が家業の後継者候補になることを許し、熱心に華道に取り組む彼に真剣に指導をし、至って公平に、真摯に向き合ってきたのだ。 ──その結果が、これである。 彼は自分を引きずり下ろそうとする親族から逃げるように、家元である母と家族の方を見やった。聞き入れてすら貰えないであろう自分は言い返すことが難しいが、自分を庇ってくれる筈だと信じて。 だって母は、家族は、自分に期待してくれていた。認めてくれていた。次の家元は自分だと言ってくれた。なら、ここでもそうだと言ってくれる。そうに違いない。 しかし──母は結局何も言わず、彼らの言うように、姉を後継者として指名した。 家族も、異を唱えなかった。あれだけ認めておいて、あれだけ支えておいて、あれだけ期待させておいて、母は、家族は、圧力に屈して梓前左衛門を切り捨てたのである。 自分にも理由は分かる。申夏刎の家は旧家である。当主である家元とて、一族や弟子の総意を無視して物事を決定することは出来ない。まして母は女だ。家業が家業故に女でも家を継ぐことが認められているが、旧体制の罷り通るこの家で、女の権力は大きくない。まず一族や弟子に認められなければやっていけない。機嫌を損ねるわけにはいかなかった。 だが、そのために息子を切り捨てたのは事実だった。分かっていたとて納得は出来ない。出来る筈が無かった。次期家元となった姉を褒めそやし、現家元の判断を賞賛する声を聞きながら、面子もプライドも踏み躙られた梓前左衛門は、生まれて初めて己の生まれ落ちた形を恨んだ。 翌日。梓前左衛門は、今まで花を生ける時に使っていた愛用の道具を全て処分した。もはや二度と花を生けることは無いからだ。花は、植物自体はまだ好きだと思えたが、生け花という芸術には、もう一欠片も愛着が残っていなかった。余分な部分を剪定するように、彼は己から生け花を切除した。 家族は道具を処分するのを止めようとしたが、母は止めなかった。息子がこれ以上生け花を続けていくことは、例え他所の家に養子に行ったとしても、華道の旧家たる申夏刎の名のせいで非常に難しいだろうということが分かっていたからだ。そうさせたのが己であるという自覚があったからこそ、母は何も言わなかった。言えなかった。 自分が淡々と道具を処分する様子を、くすくすと笑い声を漏らしながら一族や弟子たちが眺めているのを感じながら、梓前左衛門はもはや何も思わなかった。あれだけ必死に見ようとしていた他者の顔が、もはや全て猿にしか見えなくなっていたのである。見分けもつかぬ猿山の猿がいくら騒ごうと、騒音以外の何かを感じることはなかった。 梓前左衛門はあの日から、己の生き方を改めた。次期家元になれない以上、もはや周囲に馴染む努力など無駄であると悟った。猿におもねる必要など無い。真摯に向き合う必要など無い。そんなことをしても、結局こうやってまた突き放されるのだろう。適当に周囲に合わせて、周囲の好きなようにさせて、目立たないようにしていればいいだろう。 次節は丁度、進路を決める頃だった。梓前左衛門は生け花について学べる美大から、法学部のある大学に進路を変えた。周囲の人間が「ヒト」ではなく「猿」に見えるが故に、だったらせめて飼育員になろうと自暴自棄気味に決めた。入学後は実家を出て一人暮らしを始めた。顔の痣も隠すのを止めたため案の定遠巻きにされたが、無理に取り入らずに周囲に都合よく振舞えば、コミュニティの片隅に存在することを容認された。群れの一番後ろに下がって他者の背中を見ているのが、見えもしない顔を視界に入れることが無く、一番気が楽だった。 また、猿山でこれからも生きねばならないのだから、せめて少しでも息のしやすい場所を探そうという観点から、生け花以外の趣味を持つことにした。元よりその気はあったが、あの日以来他者と過ごすことに今まで以上のストレスを受けるようになっていた自覚があったため、なるべく他者と関わらない時間の過ごし方を求めていた。音楽鑑賞(主にジャズ)や読書(乱読家の傾向があったが、特に面白いと感じたのは医療系)、料理、珈琲豆の焙煎、紅茶の茶葉のブレンド、日本画、刺繍、陶芸、木彫り、ナンプレ、クロスワード、プラモデル、テレビゲーム等、様々なものに手を出すことにした。あの日から実家と華道は捨てたが、代わりに園芸や植物の品種改良などの研究も始めた。 嫌なことは「剪定」して切り離し、遠ざける。理解も共感もしなくていいから、表面上だけは周囲に合わせた行動をして常に後ろに下がる。心穏やかに過ごすために、たくさんの逃げ場を作る。他者への嫌悪や実家への恨みはずっと胸に残り続けてこそいるものの、己の生き方にそういう指針を掲げて以降は、格段に生きやすかった。無駄な努力をしていたかつての自分が、本当にバカバカしいと思える程に。 そうして月日は流れ、梓前左衛門は警察官になった。勿論相貌失認症のことは伏せ、容姿以外は今まで通り目立たないように生きていたのだが、元々器用で何でも手早くこなすことができる上、他者に肩入れしない性質が事件を冷徹に解決させることに一役買い、その気がほぼ無かったにもかかわらず順当に出世が出来てしまった。そのせいでパワハラの対象になったり、実家のように痣を理由に陰口を叩かれもしたが、それらは恨みこそすれ、猿の戯言と割り切って受け流した。 しかし、陰口はまだしも理不尽なパワハラを受けて仕事量を増やされ、自分の時間を侵食されることは腹が立ったため、「剪定」の対象と判断して部署移動を試みていたが、それさえ阻害されてしまった時はどうしてやろうかと思った。的場に零課へ引き抜かれなければ、上司を殴って不祥事を起こす形で辞職しようと考えていたため、穏便に済んで良かったと思った。 そうして移籍した零課は、今までの部署よりずっと楽だった。零課自体が他の刑事に快く思われていないため、そうした観点から陰口を叩かれるようなことはあったが、零課内部ではそんなことは無かった。痣について何かを言ってくることも無く、何かを無理強いすることも無く、少し物言いを容赦無いものにしても拒絶されず。同僚の癖は少々強かったが、黙殺できる程度のことだった。パワハラが無くなったことで趣味の時間を確保しやすくなり、植物サークルに所属して好みの花を作るための品種改良の研究を進める余裕ができた(もっとも、サークル自体は人数不足から継続が難しくなり、所属から一年せず解散してしまったが)。 相変わらず他者は猿だとしか思えなかったし、仕事自体が好きだということも無く、花に囲まれて過ごす一人の時間が一番好きだった。恩人に当たる的場を含めて班員たちに対して強く親しみを覚えることも殆ど無いし、何なら的場以外はトラブルを起こすやかましくて面倒な後輩と、礼儀のなっていない生意気な後輩と、成人にしては小柄すぎてすぐ視界の外に見失いそうな先輩だな等と、厄介に思っている節さえあり、脳内で舌打ちをすることもままあるが。今後も一緒に仕事をするのなら彼らが一番マシだな思う程度には、零課は楽だった。あの日以来、初めて他者を自分の中に容認したと言っていい。 だがある日──相模原が死んだ。 人間花壇とでも言うような異様な姿で見つかった彼女の姿が、梓前左衛門の網膜にハッキリと悪夢のように焼き付いている。目や鼻、口から咲いた夥しい数の花が、梓前左衛門に疑似的に「顔」を見せた。いっそ他人に花でも咲いていれば楽に見分けがつくものをと思ったことはある。だが、こんな光景を見たかったわけではない。こんなおぞましいものを望んだわけではない。こんな形で彼女の「顔」を見たかったわけではない。 慟哭を上げることも、涙を流すことも無かった。ただただその場から逃げ出したかった。今までこんなに「剪定」したいと感じたことは無い。嫌なことは遠ざける。逃げる。そうして生きてきたのに、しかし、足を動かすことが出来なかった。他の誰も逃げ出さなかったから。何より、恐怖に足が竦んでしまったから。己の意思に反して、肉体はこの悪夢を強制的に脳裏に刻み付けていた。 後に「庭師事件」と命名されたそれが起きてからは散々だった。あんな事件があったせいだろうか。華道に対しての熱意が消えてさえ抱いていた花への思い入れが、そっくり嫌悪感に置き換わった。あれだけ好きだった花を、今や視界に入れることさえ厭わしい。身の周りにあった家具や小物に装飾品、今まで趣味で作ってきた作品のモチーフは花や植物が殆どで、それらが周囲にあることも耐え難く、全て「剪定」した。……唯一、母に貰った園芸鋏だけは、あの時と同じく捨てられなかったが。しかし、それ以外は全て処分ないし、物置部屋の奥にしまい込んだ。 また、庭師事件のストレスからだろうか。あれ以来記憶障害を患ってしまったらしく、時折記憶が曖昧になることがあった。今までに得た医学の知識では解決法は分からなかったが、ヒトが多い病院自体が好きではないため、日常生活に支障は無いのをいいことに医者にはかかっていない。 他にも、的場からチーフを引き継いだ楓山警部に対して、妙な抵抗感のようなものを覚えている。他の班員たちもそうだが、彼女は庭師事件をずっと追い続けていた。零課の職務としても、同僚を亡くした身としても当然のことではあるのだろうが、正直あの事件のことはもう忘れてしまいたいと思っているため、チーフである彼女が捜査を打ち切ってくれればと思う気持ちがあるせいだろうか。庭師事件から逃げるように他の仕事を率先して片付けて、他の班員を庭師事件の捜査に回すのも限度がある。また、植物関連の事件ということで、かつて植物研究サークルに所属していたことなどが知られては面倒なことになるのは明白だ。全てに蓋をし続け「剪定」してしまうためにも、チーフである彼女には早く諦めてもらいたい。いっそ自分がチーフになればいいのかと思い、出世に興味は無くともその座を望み始めてさえいる。彼女の部下という立場から逃げ出したかった。 ……庭師。全てを壊したのは庭師だ。ただ穏やかに、好きなものに打ち込んで静かに生きていたいだけなのに。ようやく落ち着いてきたと思ったのに。どうしてこんなことになったのだろう。何故自分ばかりいつもこのようなことになるのだ。 いや。他の班員たちだって、小さくはない傷を負っていることだろう。自分がこの世で一番不幸な存在であるとまでは自惚れていない。だが、生まれ持った疎外感が被害者意識を加速させた。猿山の中で猿にさえなり切れぬ、飼育員を気取ることで己を保っているような自分が生きていくことは、そもそも世界に許されていないのだろうか。ありのままで生きていくことすら難しいのに、その上どうしてこんなにも失うものばかりが増えるのか。 パワハラを受けていた時に考えていたように、零課を、警察を辞めれば、きっと完全に逃げ出せるだろう。だが、庭師の件さえ片が付いてくれれば、これほど楽に息が出来る場所もない。不平不満は抱いているのに、自分の手に残った数少ないものを手放す勇気は無かった。逃げ出したい、「剪定」したいとぐずつく癖に、手っ取り早い手段を取ることを躊躇っている。 あれから三年。梓前左衛門は日々淡々と仕事をこなすその裏で、粘つくような恨みと湿っぽい劣等感、焼けるような焦燥感に叫び出したいような衝動を、ずっと煮詰めながら生きている。
※
歌詞を引用、及び記載することは禁止となりました
(Youtubeや歌詞サイトのURLだけ書くことをお勧めします)。
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