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藤鳥 桂月（フジトリ カヅキ） 聖アンディー教会にて奉仕している修道士。 へらへらとしていて軽い調子ではあるが、それが逆に親しみやすさを感じさせるのか地域の人々には頼られることが多い。 聖職者という職に就いているにもかかわらず信仰心が薄く、ミサやお祈りの時間は居眠りすることもしばしば。 酒・タバコ・ギャンブル全部やる。一時期は女遊びもしていたが8年くらい前から控えるようになった。 趣味は創作料理作り。特技は食肉の解体。 幼少期は家庭環境が非常に悪くネグレクトを受けていた。母親は金遣いが荒く男遊びに明け暮れ、そんな母親を父親は見限り桂月を置いて出て行った。しばらくして母親は別の男と再婚したが、新しい父親は酒癖も悪く、機嫌が悪くなるとすぐに桂月に対して暴力を振るった。桂月の現状を憂いた当時の小学校の担任が児童相談所へ通報、その後は親元から離され児童養護施設に入所する。 義務教育が終わったすぐあとに児童養護施設を出て、居候させてくれそうな家を転々としながら上京。特に目的があったわけではないが、「今よりも幸せになりたい」という思いだけはあった。 17歳の時に聖アンディー教会の神父に声をかけられる。神様なんか信じちゃいなかったが、「自分のやりたいこと、生きるための道標が見つかるまでここにいればいい」と神父から言われ、それならまあいいかと思い修道士としてお世話になる運びに。 自分のやりたいことが見つからずに現在まで修道士を続けているが、教会に訪ねてくる人たちの手助けや世話をすることは割と嫌いではないため、なあなあで続けている。 8年前、教会に炊き出しを求めてやってきた青年・田大誠と出会う。 最初は「こんなに若いのに炊き出しを求めるほど困窮してるのか、なんか苦労してそうだな」というそれだけの印象だった。 炊き出しは準備中だったのでなんとなく自分の昼飯をあげた。あまりにもうまそうに食ってるから帰りにおやつも持たせてやった。 それから頻繁に協会に通うようになった彼の相談相手になったり、仕事の練習相手になったり、時には教会の手伝いなんかもしてもらったりしていた。 一緒に過ごすうちに、彼が真面目で純朴で優しいだけではなく、自分のやりたいことに対してはひたむきに努力ができる芯の強い人間なんだと知った。いつからか、彼の純粋で真っ直ぐな瞳が美しく尊いもののように見えていた。聖書に書かれるような聖人でも、教会の聖職者たちのような清廉さがあるわけでもない。ただ人間として悩み、足掻きながら一生懸命に生きる様は自分にはとても眩しく思えた。そしてその輝きは自分にはないものだったから、もっと近くで触れたいと思ってしまった。その感情が慕情へと変わるまでそう長く時間はかからなかった。 時折、彼は寂しそうな顔をしていたが、それでも気丈に振る舞う姿に、少しでも彼の救いになってやりたいと思うようになっていた。しかしそれと同時に、彼の唯一になりたいという邪な感情も抱いてしまう。 結果、彼の悩みや性格を逆手に取って、身体の関係を結ぶようになった。それでも卑怯な手段をとったことによる罪悪感や、彼がここへ訪れることがなくなってしまうのではないかという恐れから、自分の気持ちを伝えることはしなかった。 彼の声には特別なものがあるわけではなかった。でもその声が好きだった。素人から見ても演技も発声も悪くはない、これだけ努力しているんだからきっとそのうち報われるだろうと楽観的に考えていた。 しかし彼の努力が世間に認められることは終ぞなかった。 彼から「殺してくれ」と言われた時には、酷く取り乱し声を荒げてしまったのを覚えている。死を選んだ理由を問いただしても彼は答えてはくれなかった。声優として今まで努力してきた彼に対して、きっと当てられた役が悪かった、他の道もある、何も死ぬことはないと的外れなことも言った。聖職者らしからぬ冷静さを欠いた行動や言動は、今思い返してもあまりに滑稽だ。 どれだけ言葉をかけても、彼が考えを変えることはなかった。結局自分は彼の救いになることはできなかったのだ。 きっとここで自分が彼を殺すことを拒んだら、彼はどこかでひとり寂しく死ぬのだろう。それならば、自分の手で殺してやることで少しは安寧を与えてやれるだろうか。最期くらいは彼の救いになってやりたいと馬鹿な考えに至ってしまった。今ではその時の自分の選択を酷く悔やんでいる。 それでも神に告解なんてしない。神なんてものがいるんだったら、誠にこんな酷い仕打ちをするはずがないから。この罪は俺だけのものだ。一生誰にも、神にすらも赦されなくていい。 ▼HO2について 名前：田大 誠 年齢：享年27歳 呼び方：誠

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