タグ： レンのロスト、引退

若く登山家として優秀で注目された事もあるが、元は根が弱くよく心が折れる。 しかし、本当はその度に共に登ってきた「熱海宗谷（あたみ そうや）」に何度も励まされ、そのおかげでいろんな山を登頂できたのだ。 何度も共に登るうちに自然と彼に片思いをしていた。 だが、彼は氷花に何も言わず第一次狂気山脈登山隊としてかの山にアタックし、未だ還ってこない。 それは彼女のことを思ってのことだったのだろう。しかし、第二次登山隊の結成が発表された時、氷花は志願する。 もう亡くなっているかもしれない。それでも、彼女は志願する。 共に育った幼馴染を、共に生きてきた親友を迎えに行くために 彼女は狂気山脈に挑む。 狂気山脈〜邪神の山嶺〜 『氷花の想い〜紡ぐゼラニウムの花〜』 氷花は自ら判断し、残った。愚策と言えるだろう。 なんなら助かる可能性があっただろう。だが、敢えて残った。 いや、そもそも脱出する気が無かったのだろう。 だが、二人を自分のエゴに巻き込むわけにはいかない。それどころかここから二人を逃がさなくては… そう思った氷花は頭で考えるよりも先に行動していた。二人を洞窟の出口、おそらく旅客機が突っ込んだ穴から二人を無理矢理、押し出す。 自分の名前を叫ぶ声が聞こえる。 しかし、二人のパラシュートがゆっくりと降りていくのが見えた。 「満足だ。二人とも、ありがとうね…貴方達は行って…生きて…貴方達の未来に幸あれ」 そう呟きながら二人の無事を祈る。 やがて、二人のパラシュートが見えなくなる。 見えなくなると同時に踵を返し、宗谷を探す。 少し時間を掛けてだが、宗谷を見つける。 「宗谷、一人にはしない。ずーっと一緒だよ…愛してる。おやすみ…」 そう言えば、宗谷の体に寄り添い、静かに眠る。 その寝顔はどこか穏やかな寝顔であった… 氷花は目を覚ます。 ここはどこだろうか？ 見渡す限りゼラニウムの花が咲いている。 どこか懐かしい匂いがする。 「ったく…本当に早く来すぎだよ…でもまっ…よくやった」 その声に振り返る。 宗谷だ。 探していた宗谷だ。 「ごめんね？早く来すぎちゃった」 氷花は笑いながら誤魔化す。 「いーよいーよ、これからずーっと一緒だ。もう、離さない」 そう言いながら宗谷は氷花の手を握り、歩き始める。 ふたりは笑いながら歩き続ける。 いつか誰かが見つけるだろう。 ふたりが寄り添い、眠るように死んでいる遺体を… そして、その側にはゼラニウムの花が添えられていたことを… だが、必ず見つけたものは口を揃えてこう言う。 「その寝顔は穏やかだったよ」 狂気山脈～邪神の山嶺～　宗谷と共に眠る 探索者ロスト

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