タグ： たかなし ゆら

◆家具店員・配送ドライバー（2010商店員/店主、ドライバーベース） 大手欧風家具店にて、裏方・配送をメインに正社員として勤めている。 目つきが悪く不愛想なため接客には不向きだが、力持ちで黙々と仕事をこなす実直な働きぶりは社内でも高評価。背が高く威圧感もあるため、初対面では大層怖がられやすい。 後述の事件により右のこめかみに切り傷の痕があるものの、本人はそれを厭ってはいない。普段隠しているのは周囲の人間がますます自分を怖がって萎縮してしまわないようにするため。 幼少時から極〇空手に通っており、実力は人並み以上。加えて高校までは治安・風紀の乱れた学校の多い地区で育ち、地元の有名なレディース一派の頭として鳴らしていた。ゆえに、素ではあまり口がよくない（無口ではない）。 とはいえ積極的に喧嘩を仕掛けていたかと言われればそうではなく、頭を務めていたのもどちらかと言えば周囲に祭り上げられたため。いざ喧嘩となれば口より先に手の出る性格ではあったものの、無用に突っかかることはまずなかった。概ね仕掛けられた喧嘩の迎撃や舎弟の尻ぬぐいである。もちろん「無用な戦闘」はしなかっただけで、理不尽な侮蔑や屈辱には黙っていない。 木刀やヌンチャク、メリケンサック、ヨーヨーなどいかにもな武器の跋扈する地元レディース界隈では珍しい完全ステゴロ派。恵まれた体格・長い脚から繰り出されるしなやかなキックはさながらモーニングスターのような軌跡で以て相手を打ち倒すという。足立区近辺で名を轟かせた「流れる明星」と言えば由良のことだ（かつての舎弟談）。 そんな経歴を持つ由良だが、高校三年次に「スケバンはやめてまともな大学に行こう」と一念発起し（気が変わったとも言う）、猛勉強を始める。 しかし無論、彼女を頭としていたレディースたちは黙っていない。祭り上げた者たちの大半は「本人がそういうなら」と涙ながらに見送ることを決めたものの、組内で元々由良と張り合っていた「三鷹一派」を中心に過激派が謀反を起こす。 過激派は〝ケジメ〟をつけるために力関係の整理――無抵抗のまま暴力を振るわれ、由良はもう頭として相応しい人物でないと周囲に知らしめる――をすべきだと詰め寄る。親由良派は当然それを容認するわけにはいかない。そうして組は二分し衝突を始める。 己を巡って血が流れることは無意味、無用だと断じ、それを止めるために由良は動いた。筆頭である三鷹を屋上に呼び出して話し合いの場を設けたのである。 〝ケジメ〟の格好の機会だと過激派は全員で乗り込み、それを阻止するべく親由良派も参じる。結果として組の者が一堂に会し、一触即発の空気の中、由良と三鷹が対峙することとなった。 三鷹の言い分は「一蓮托生の組の頭ともあろう者が、何の傷もなく綺麗なまま抜けようなど虫が良い話。結びつきを切った証の痕、痛みが必要だ。自分たちにそれを与えさせるべきだ」というもの。理不尽な要求に今にも噛みつかんとする親由良派を手で制し、ならばと由良は使ったこともない小さなナイフを取り出す。得物を構える三鷹。しかし由良が切っ先を向けたのは、己の顔だった。 「要求はわかったが、そのためにお前たちの手を汚させては今後の組に響く。証、傷跡、痛みが必要ならば結びつきを断つ私自身の手で十全、むしろそれこそが正しい形。今からお前たちの気が済むまで傷をつけるから、もういいと思ったら言ってほしい」との旨を告げて躊躇いなくナイフを振った―― ――響く親由良派の悲鳴、咄嗟のことに届かなかったいくつもの手が空を切る。しかし、由良が真っ直ぐ狙ったはずの右頬には傷ひとつない。伝う血はこめかみについた僅かな切り傷からのものだった。……ナイフの切っ先が逸れたのだ。唯一、手の届く範囲にいた三鷹の、正確無比なヌンチャクの一撃によって。 静まり返った屋上で、三鷹の声は風に乗る。 「あたしはアンタの、その綺麗なところがいけ好かない。顔でも身体でもない――その潔さ、気風のことだ。だから止めた。……だが、今のでもう興が削がれた。これ以上文句は言わないと約束する、組を抜けるなら好きにしろ」とだけ言い残し、どこか哀愁の漂う背中を見せてその場を去る。筆頭を失い、由良の気迫に飲まれ烏合の衆と化した過激派もやがて屋上を後にする。 こうして後に「黎明の日」と呼ばれる由良脱退事件は幕を閉じた。 すべてが過ぎた頃に明らかになったことだが、三鷹は「自分たち過激派――かつての仲間に手を下させることは、転じてリーダーとして常に高潔であった由良の誇りを傷つけること。それを強要すれば、己の誇りと組の全てを守るために、足を洗わずに残ってくれると考えた。自分が組から放逐されたとてもと企てた計画をああもあっさりと打ち砕かれて、敵わない、止められないと悟った」と一人の舎弟に語っていた。それ以降は人が変わったように堅実な（？）組の運営補助として腕を振るい、やがて親由良派にも認められリーダーに近いポジションに収まるのだが、それはまた別の話である。 という経緯を経て無事に都内の中堅私立大学史学科に合格。新卒で就職を果たし、現在に至る。 体力などは高校時代より落ちたものの、まだまだ現役。リーダーとしてではない一介の歯車として周囲への心配りも学び、随分と丸くなる。しかし、自分の意思や誇りを貫くことだけは決して諦めない。 技能について MA……幼少期からの空手技術。 キック、回避……高校時代の杵柄。 聞き耳、目星、自動車運転、重機械操作、機械修理、値切り、ナビゲート……2010ドライバーベースによる。 ◆人生の海の嵐で 目星99F　DEX×４　100F　聞き耳C　キック98F

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