タグ： 海王 中国人 名誉米国市民

――中国 山東省山林寺・金剛拳 「老師ッッ行って参りますッッ」 　楊海王は包拳を固め、最大級の礼を持って山林寺を出た。 　中国拳法四千年――発展し続ける国際社会、我が中華民国は大いに遅れを取っている。 　しかしッッ中国拳法が西洋武術に遅れを取っているとは到底思えないッッッ！！！ 　私がアメリカに向かい証明してみせましょうッッッ中国四千年ッッッ金剛拳の強さをッッッ！！！ ～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～ 　カリフォルニア州に置かれた空軍基地。 　神話生物から合衆国の危機を救い、名誉勲章を授与された楊海王。彼は最高国賓としての扱いを受けた。 　そして数々の式典に出席した後に合衆国カリフォルニア州から中華民国山東省へ丁重に送り届けられる。 「（紆余曲折を経たが…初志は果たした。合衆国は知った、我が金剛拳の頑強さを）」 　自身に向けて敬礼をする白人達。 　彼らの中には、誰も楊海王を取るに足らない黄色人種であると見下す者は居なかった。 「カイオー・ヨウッッ！！！」 「ッッ」 　今まさに飛行機へ乗り込もうとした時、後ろから誰かに呼び止められた。 　振り向くとそこには――アーカム市警警視レイ・スタッキー。…楊海王が合衆国で得た"有志"だった。 「ミスター・スタッキー…ッッ！？ わざわざマサチューセッツからここへッッ！？」 「キミがChinaへ帰ると聞いた…私に声を掛けないなんて、水臭いじゃないか」 　レイ・スタッキーは楊海王へ歩みより、自らの上服を脱ぎ去る。 　警官として鍛えられた身体の中に年齢相応の弛みが見て取れる。 「カイオー！ ワタシも金剛拳を学びたいッッッ」 「ミスター・スタッキー…ッッッ」 「キミに帰るべき場所があるのは分かっているッ！だから、最後に一度…見せてくれないかッッ金剛拳をッ！！！」 「………フフ、何という……少々待ち給え」 　楊海王は服を脱ぎ、傍らの兵士に持たせてレイ・スタッキーの前に立った。 　レイ、兵士達、そして飛行機のエンジニア達が楊海王の姿を注視する。 　皆が見たいのだ、かの恐るべき神話生物の攻撃をその五体のみで防いだ金剛拳をッッッ！！！ 東洋の神秘をッッッ！！！ 「我が金剛拳！その実態は五体の金剛化（ダイアモンド化）を旨とするッ！」 「木剣に始まる受打訓練は、やがては鎖での殴打へと変化し、大型車両による腹部通過を経て――ついには旧式のカノン砲による砲弾炸裂の実体験に至るッッ！！！」 「そして最終訓練は台風来週の夜半に行われる落差30mの滝壺にて――夜明けまでの滝浴びを以て終了とす！！！！！」 　マサチューセッツでの伝説に始まり、カリフォルニアでの実演からアメリカ流の金剛拳は始まった。 　山林寺に多大なる敬意を払われて開かれた米国流の金剛拳――別名・スタッキー流金剛拳は長きに渡って反映した。

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