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成瀬　莉々（なるせ　りり） 幼い頃から、死ぬか生きるかその瀬戸際にいつもいた。誰にも似てない肌の色が大嫌いだった。 閉じ込められた部屋の中、泣いても喚いても両親が来てくれることがなかったから次第に諦めるようになった。一晩帰ってこない事はざらで、飢えて、喉が張り付いて、唇が渇いてひび割れて、髪がぱさぱさになって酷い匂いで、自分が生ごみになった気がした。手首は、骨位の太さしかなかった。骨と皮で息をしていた。 助けて。そう願った。死ぬ間際の最期の願いだったのかもしれない。気が遠くなって目が覚めた時に、両親が通り魔に刺されて死んだことを警察の人から聞いた。…助かったんだ、そう思った。その瞬間ぼろぼろと涙が込み上げて、しゃくりあげて声が出ず。警察の人は「両親が亡くなったのだから無理もない」と思ったのだろうか。ただ助かった実感に安堵で涙が零れていた。 だから孤児院で出会った（信者）の話を聞いて、唯助けたいと思ったんだ。自分はこうして助かった、と藁にも縋る思いで話した。当たり前に食事が取れて、寒い日に床に転がり眠る事もない。それだけで十分だから。誰かの理不尽で居なくなる事がないように、誰にも奪われる事のないように、守ってあげたいと望んだ。だから（信者）が孤児院に残れることになった時、本当に本当に嬉しかったんだよ。 そうして月日が流れた。愛なんて知らない。だからきっとこの感情に愛と自分で名前を付けた。誰にも奪われる事のないように、守ってあげる。独りよがりに見えるのかな。自分でもそう思った日もあったよ。だって祈るだけなんだから。自分じゃなにも出来ない。だけどここを守っていたいんだ。 はじめは誰かの救いになればなんて思って祈るだけだしとしてきた事が、気が付いたら人が人を呼び小さな宗教団体となっていた。その頃にはもう自分に神が憑いているということを実感していた。純粋無垢にこの力で得た家族を信じた。いつ無くなるかわからなくても大事な場所。この力がなくなったらどうしよう。ここが脅かされる日が来たらどうしよう。不安がどんなにあっても大丈夫だと凛とした佇まいで居た。役職が己を作っていた。 教えられなかった愛を配り歩く、救いになるように。それが本当の愛と呼べるものなのかなんてわからないけれど。 信者や教団含めて、自分のいるこの小さな世界を愛してる。小さな世界を愛して、大切に守っていこうと思ってる。 だけど（信者）君だけは、神様がいなくなって私がただの人になってしまったとしても、私のそばから、いなくならないで。 信者と二人の時は無邪気な姿を見せるし口調も砕ける。 最近信者が神の力を手に入れたと聞いた。敬虔な信者には同等の力が与えられると(いつの間にか)されているらしいが、その理屈はわからない。（信者）本人が自分にそれを告げるのであれば無条件に信じるのだと思う。

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