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　不意に、指が一本増えていたかのように、新たに動かせる器官を見つけた。揺り椅子に座る足元に血溜まりが湧き、私の意思でふたりの紅い人形がどろりと立ち上がる。そのどちらもが処刑人の剣を携えて立っている。私が断頭台に着くのを待っている。 　私は久し振りに立ち上がり、歩み出すときに、ふらつきひとつしないことに気がついた。体内を回る、私の知らない力が、衰えた身体を動かすことを可能にしている。そうだと思った。生命活動を行うためのエネルギーに溢れている。そんなものいらない。 　所定の位置に着く。膝を折り、首を台の上に。腕はだらりとぶら下げた。そして刃が降りるのを待つ。剣が振り上げられた音がした。 　脳裏にはあなたが浮かんでいる。あなたのために綺麗になりたかったけど、あなたがかわいいと言ってくれたあの顔さえも失くしてしまったの。もう私の何もかも、あなたに晒したくないの。ごめんなさい。ごめんなさい。 　二振りの刃は容易く彼女の首を落とす。そうすれば直ぐ、彼女の血によって為されたあらゆるものは死んだ血液に戻る。断頭台が弾けたことで、彼女の身体は血溜まりの中に叩きつけられた。従者たちも主人の後を追う。 　程なくして、彼女の愛したひとりが部屋の扉を開けるだろう。彼女の元へ帰るために。

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