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海が枯れるまでHO１ 抜群のビジュアルで７年前にヒットしたアイドル樹花（じゅか）。 かつてほどの人気は無いが、今でも根強いファンが付いている。 蝶のような大きなリボンがトレードマーク。 以前からビジュアルだけで歌も踊りも下手と言われていたが、近年ではさらにその声が大きくなっている。 年齢的にもいわゆる賞味期限が近付いており、オワコン扱いされている声の方が大きい。 それでも樹花は変わらず、応援してくれるファンに笑顔を振りまいている。 本名は森川　樹（もりかわ　いつき） 夢も目標もないままなんとなく過ごしていた義務教育時代を終え、15歳でアイドルデビューした。 前述のとおり、17歳の時に活動が実を結びヒットし、その後じわじわと人気を落としつつも活動を続けている。 そんな樹がアイドルとしてデビューをしたのは、姉の花（はな）の影響だった。 花は幼いころからアイドルに憧れ、15歳にアイドルデビューした。 大きく人気が出ることは無かったが、いつも華やかな笑顔向けて裏表なく誰にでも優しい様は、その名の通り花のようだと言われていた。 しかし花は21歳のある日突然、ステージで倒れることとなる。 完治する確率は低くは無いが、治っても今までと同じように活動できるようになるには時間がかかる。 つまりアイドルとしての再起は絶望的となってしまった。 その頃樹は14歳だった。 夢も目標も特に無い樹であったが、姉の花のことはシスコンと言われても差支えが無いほど愛していた。 そんな樹が姉のために行ったことが、自分がアイドルになるという選択だった。 アイドルとしての名は花と共に歩む意味を込めて樹花とし、活動内容は完全に花のコピーだった。 花よりも良い容姿と器用さで、だんだんと人気を伸ばしていく。 客観的に見ると花の上位互換であったが、それでも樹は花の方がアイドルとして優秀であったと感じている。 そんな樹花の活躍を、花も病室で喜んで応援していた。 喜ぶ花の様子を見て、樹も活動へのやりがいを感じていた。 そんな最中に花は死んだ。 治る確率の低い病気では無かったはずだったのだが、必ず治る病気では無かったのだ。 花25歳、樹18歳の時だった。 どうしてこんな事になってしまったのかと思いつつも、樹は花のためにも樹花にのめりこんだ。 いくらのめりこんでもじわじわと人気が下がっていくことに苛立ちを覚えていく樹。 自分の居場所が奪われていく恐怖におびえ始めたある日樹は、花が病気に耐えられなかった理由に気が付いてしまった。 成功していく樹花に、自分も活躍しているように感じている花の言葉に偽りは無かったが、それは同時に花自信の存在意義を見失わせることにもつながっていった。 もう無理だと分かっていながらも無意識のうちに抱いていたアイドルへの情熱、生きる希望を失っていくことに花を含めた誰も気が付くことはできなかった。 樹も自分自身の活動が花を元気づけていると思っていた。 樹が花を殺したとは思っていない。 それでも止めを刺したに近いことはしてしまった。 いつしか無意識に手首を切るようになった。ロープを吊るすようになった。ビルの屋上から下を覗くようになった。 そこにきっと花がいるはずなのだ。 それでも花は樹花の活躍を望んでいるはずだ。 そこで花も生きていくことができるのだから。 樹花を壊してはいけないという理性と、花に会いたいという感情が頭の中をごちゃごちゃと渦巻く。 少なくとも、花が枯れるまではアイドルを続けなくてはならない。 25歳になるまでは

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