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数年前、検定を無事通過しプロ入りを果たした遅咲きのヒーロー。 オルクスとハヌマーンの能力を生かした領域間跳躍と、ブラム=ストーカーの能力により自身の血を媒介に作り出される深紅の武器が特徴で、"駆けつけるヒーロー"として一部の層にはそれなりに人気を博している。 それでも幅広いファン層を獲得できずにいる理由は、自身のヒーロー活動にスポンサーをほとんど付けず、メディアへの露出が事件への出動を除いてほとんどない為。露出がない為、彼女の出自が掘り下げられることも少なく、未だに謎多きヒーローである。 同期などには、メディア露出に関して、"自身の原点(オリジン)"であると答えているが、はっきりと判明していない。 良くも悪くも、ヒーローのビジョンを強く持っており、気に入らないヒーローに陰湿なぶつかり方をすることもある。 そんな謎多き彼女の正体は、一人の少女の願いを歪に叶えたレネゲイドビーイングであり、願った一人の少女こそが彼女である。 少女──釤 璃依葉はかつてヒーローに憧れたどこにでもいる少女だった。 困難に打ち勝ち、人々を救うヒーローの姿に。 少女は夢に邁進した。誰よりも真っ先に駆けつけるヒーローになれるようにと、ひたすらに走った。 しかし、現実は非情にも彼女の夢を打ち砕いた。ヒーロー認定テストに通ることが出来なかったからだ。単純な話、実力不足。力が足りないならまだ受け入れられた。しかし、力はあってもとてもでは無いがヒーロー然とした行いのできない連中がテストを通過し、ヒーローになった事がどうしても受け入れられなかった。 それまでの夢を打ち砕かれた少女は腐敗していき、メディアの露出の多いヒーローを対象に匿名の掲示板で誹謗中傷を書き込みまくった。 あのヒーローの性格は。あのヒーローの行動は。理不尽な憎悪を込めて書き込めば書き込むほど、自分がヒーローになれていればという想いは膨らみ、膨らめば膨らむほど嫌悪・憎悪・殺意と負の感情にばかり落とし込まれていく。 食事もまともに喉を通らず、ただただ衰弱していく少女は、最期まで機械の前から離れなかった。 そして、「生まれ変わったら、今度こそ自分のの理想の、本物のヒーローになりたい」と願いを書き込み、息を引き取る。 そして、その願いを叶えるチャンスは少女が死んでから訪れた。 死に際の抱え込まれた規格外の思念が、電子の海に一つの魂を作りだし、その魂を抜け殻となった骸に宿したのだ。少女にはなかった圧倒的なレネゲイドを伴ってだ。 それがもう少し早かったならと思わずにはいられないが、皮肉な事に、少女が死んだことで少女は別の自分へと生まれ変わり、願いの契機となった。 少女が生み出したレネゲイドの思念体は、少女の願いを引き継ぎ、評価に左右されず、また評価を求めず、それでいてどのヒーローよりも速く駆けつけられるヒーローになる為に動き出す。生前の少女が果たせなかった夢を追う為に。

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