タグ： 無限抱擁

葉月要は正義がなされるべきだと確信している。彼の内なる神がそれを求めているからだ。 取り柄のないタダの人間だった葉月は、努力を重ねることで順調に社会的成功に近づいて行った。すなわち、頑張って勉強してそこそこいい学校に進学した。ほんの少し努力家なだけの、本当はそれまでどまりの人間だった。 入った大学は普通にたくさんのサークルがあり、普通にたくさんの勧誘を受けた。オカルト研究部などというものに入るつもりは一切なかったが、存在しないものを超常だの心霊だのと騒ぐ連中を馬鹿にするためだけに、部室で行う儀式とやらに参加してやろうと思った。 普通に雪男やネッシー、ビッグフットを話題にして盛り上がるだけの部活動が、その日だけは偶然にちょっとした本物を手に入れていた。最悪な偶然だった。 祭壇にまつられた異形の像は見るものを狂気の淵に叩き込んだ。ほかの人間はみな白知のごとくなり果てた。葉月は一瞬の幻覚を見た。秩序も常識もすべてが無意味となる混沌があるのに、普通の生き方が何になるというのか。人の敵を討つことこそが、単純絶対の正義であると教え諭す何者かの存在を感じた。ただの幻覚に過ぎないが、彼にとってそれは神託だった。以来、葉月は運と精神力のみで命をつなぐ、怪奇を追い続けるものとなった。 必殺技は知覚を加速させ停滞した時間のなかで敵を必倒する《涜神断罪》。

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