タグ： ニャルの探索者リスト

自分がこの世界の中心であることに気づいたのは中学の頃だった。 欲しいものは何でも容易く手に入り、何を始めてもすぐにできるようになる。 何を為しても称賛される世界。 まるで自らの行い全てが、世界から肯定されているかのようだった。 自惚れるなと反論してくる者すらいなかった。 孤独だった。 対立するアンチテーゼが存在しない自分に、果たして人生においての成長はあるのだろうか。 ヘーゲル曰く、全てのものは己のうちに矛盾を含んでいて、自身というテーゼに対しても例外なく対が存在するはずなのだ。 だが自分にはそれがない。 中心はどんな場合であっても必ず1つしか存在できない。 故に中心は孤独を強いられるのだ。 たった一人、それを否定した人間がいた。 ──物語の中心人物は何も一人とは限らんだろ。2人で主人公なんて作品、いくらでもあるんだし。 そんな孤独な主人公面してんならなってやるよ、お前のアンチテーゼに。 何となく学生時代を過ごし、何となく主席で卒業して、何かに誘われるかのように警察官へとなった。 本人に自覚はないものの、警察という職種を選んだのは、犯罪者という自分と対極な「否定される人間」と相対することで、何の変化もない人生を変えたいという意志に影響されている。

※歌詞を引用、及び記載することは禁止となりました(Youtubeや歌詞サイトのURLだけ書くことをお勧めします)。
↑ページ上部へ