タグ： クトゥルフ X2U 虫の巣

元々根暗で口も悪いが、怪盗は堂々と鮮やかに振る舞うものだという思い込みがあった。そこで持ち前の勤勉さを活かし自己暗示をかけたところ、仮面をつけている時のみ怪盗として振る舞えるという二重人格のような状態になった。人と接すこと自体好まないが、女を前にすると一瞬で赤面し逃走するという人見知りっぷり。怪盗時ですら女は若干避ける。 以下HOバレ 「『洛児』はどうだろう」 名前は無い、と言った自分に、彼は考え込んで、やがてぽつりとそう呟いた。 ルンペンネズミの仲間入りを果たした日の事だった。 彼は自分と同じく銀幕で下働きをしていたが、その中でもリーダー格の様な存在だった。過酷な労働の中でも仲間を気遣い、皆に慕われていた。知識も豊富で、自分の様に名前が無い新入りには、映画や小説から名前を引っ張り出しては与えた。この銀幕のルンペンネズミ達の仲が良いのも、偏に彼のおかげだった。自分は当然、そんな彼を尊敬した。 ＿＿＿銀幕が炎に包まれたあの日。燃え盛る銀幕から命からがら逃げ出したあの日。崩れかかった入り口から這い出て、呆然と周りを見渡した。囲む野次馬と、必死に金を運び出す雇用主と警察。 そこに仲間は誰一人居なかった。あの彼も。 叫ぶことも、泣き喚くこともできなかった。只々嗚咽を漏らし、彼を差し置き自分だけが生き残った絶望に愕然とした。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ＿＿怪盗は、華麗でなければいけない。 彼の真似事で読んだ小説や、こっそり覗き見た映画では、彼らは見事な芸当で宝を盗み出していた。 ＿＿怪盗は、優雅でなければならない。 美しい所作と言葉使い。一人称も、『俺』ではなく『私』に。 ＿＿怪盗は、余裕でなければならない。 臨機応変ができないのであれば、前もって緻密な計算と計画を。 ＿＿怪盗は、冷静でなければならない。 復讐心を顕に金持ちを襲うなど、以ての外。 どうせ見返してやるなら、派手に。 怪盗として成功すれば、その名は世間に轟くだろう。 復讐だと気づかれてはならない。 しかし、仲間のように、金持ちに見放され死んでいくルンペンネズミがいてはいけない。 助けてやるのは少々お門違い。 ならせめて、選択肢を与えたい。 連中に蹂躙されたままという運命に刃向かい、自由を勝ち取るという選択肢を。 どうかこの復讐が、腐れ金持ち共へのアンチテーゼと、ルンペンネズミへの扇動にならんことを。 ＿＿あの日から燃え尽きぬ心臓の炎が、いつか報われんことを。 〈怪盗名〉リグラ regraを逆さにする→arger(ドイツ語で怒り) 仲間を見殺しにした雇用主や汚職警官、そして自分達をルンペンネズミと蔑んだ奴等への復讐心を体現。この怒りは自分だけのものではない。怪盗リグラは、虐げられてきた者達の怒りの権化だ。 〈夢〉 怪盗として名を馳せ、ルンペンネズミ達に下克上を煽り、自由を得るための闘争という選択肢を与えること。そして、より多くの同胞が自由を得ること。 〈決め台詞〉 「サァお集まりの紳士淑女の皆皆様。どうか心ゆくまで、この至高の悪夢をお楽しみください…」

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