タグ： あなたしか見えない！

11月2日生まれ。さそり座。左利き。B型（Rh＋） 信仰）なし 既往歴）HT、狭心症 手術歴）腱鞘切開（60代、左手）、虫垂炎（中学生） 内服）アムロジン、アスピリン、タケキャブ 彼の人生は珈琲にすべてを捧げたと言っても過言ではないだろう。彼がまだ若かりし頃に厳格だった父に連れられて行った喫茶店で出された1杯の珈琲。 それがきっかけだった。それを契機に彼は取り憑かれたかのように珈琲のことを学び始めた。喫茶店に通い、一連の作法を教わり、自分の店を出すことが夢となった。大学へ進んだ彼は経営を学び、そうして卒業後オーストラリアでさらに学びを深め、40代になる頃には「ソルコーテフ」をオープンするに至った。 そうして30年がたった今でも彼の珈琲への熱は冷めていない。 珈琲は素晴らしいものだ。若者にもそれを知ってもらうべくラテアートなんてものまで初めた。 平均年齢の高い客層だが徐々に若者も増えつつある。ラテアートの成果だ。 そんな彼の唯一ともいえる趣味は茶器の収集である。珈琲の教信者とも呼べる彼だが、紅茶も嗜む。 茶器の種類は多岐にわたり、かつ非常に美しい。彼はそれを店に飾るのが好きだ。 彼の店に入ってまずその数に驚くことだろう。 穏やかで温厚、あらゆる物事において不満を持たないような彼の最近の悩みは老いである。祖父も父も頭皮は賑やかなまま死んでいった。おそらく寂しい頭になることはないだろうが、白髪ばかりの髪は定期的に染めなければみすぼらしい。手間がかかる、と嘆いている。内服する薬は増えるばかり、医者にかかることも増えた。抗いがたい老化の絶大な力になすすべなくしおれていくのは虚しいものだ。 彼の店の従業員は彼を除いて4人いる。正規雇用の従業員が2人、バイトの大学生が2人。そのうち1人は彼の弟子で、将来貢が死んだあとは弟子の彼がこの店を引き継ぐ。彼の資産はこの店だけだ。彼自身の家族はすでに他界しており、もはや思い残すことは弟子が自分の味を継承しすべて伝え終えることだけ。 そのはずだった。 ある日、銭湯で青年に出会った。少し話して、仲良くなった。青年はここの人気者のようだ。 この出会いも何かの縁、最近始めたラテアートをこの青年に振舞ってみよう。そうして青年をうちへ招待した。 格式高い喫茶店などにはあまり行かない、と話す青年に気にしなくていいと笑いかけながら珈琲と菓子を出す。 未知のものに触れたようにおいしいと言ってはしゃぐ青年を見て彼は純粋で美しいと思った。 美しいものは収集したい。そういう自分には癖がある。気づけば自宅の壁が彼の写真でいっぱいだった。 ああ、やはり目的のある人生は素晴らしい！ 好きな色は青。オーストラリアで見たあの海はひどく美しかった。 好きな飲み物はもちろん珈琲。王道だがブルーマウンテンが好み。 好きな食べ物はチョコレート。誰だって甘いものが好きだ。

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