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｢おっ、……大きな音を立てないで……｣ ｢え、ぁ、うん、そう、夜勤、なんです｣ 看護師。雷恐怖症。 *☼*―――――*☼*――――― 大きい音が嫌いだ。 子供の頃、ヒステリックな叫び声と物が割れたり壊れたりする音が地獄の始まりだった。不仲だった父と母は自分が寝てから静かに言い争いを始める。だんだとエスカレートしていくそれは、次第に大喧嘩へ発展していき、光河は耳を塞いで布団の中に蹲るしかなかった。 今でも、大きな怒鳴り声や物を壊す音にはトラウマがある。雷が近くに落ちる音は格別で、足が竦んで動けなくなってしまう程に。 看護師になったのは母親がそうだったからだ。お母さんみたいな仕事をしたいと言えば少しヒステリーは収まったし、自分も好かれていることで安定を保てていた、ような気がする。 仕事をはじめて自立するようになってからは親とは離れられたが、対人の仕事をする上で自分の引っ込み思案の性格では日々ストレスが溜まっていく。上司のちょっとした叱る声や患者の喚き声が、かつての実家を思い出させる。 光河の日々は段々と憂鬱なものになっていく。主食はコンビニで買ったゼリー飲料。あまり健康的な生活とは言えなくなっていた。 *☼*―――――*☼*――――― 【ブラック×アウト×ライト】(2021-9-29) 「……はい、お風呂に入ったら、おいしいものをたべましょうね」 結局何があったのか覚えていないけれど、年の離れた子供に懐かれてしまったようだ。 店員とお客様という関係は、ホテルのネオンに消えたらしい。 ……これって、犯罪じゃなかったよね？

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