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二部リーグのサッカー選手。ポジションはウイング。 性格は熱血で愚直。ちょっと頭に血がのぼりやすい一面も。 浦河深雪という恋人がいる。 幼い頃から、夢はサッカー選手だった。 かつては天才的なドリブル技術と精密機械と呼ばれるほど精確なクロスを放つ技巧派として、全日本U-15にも選ばれる程の実力を持った将来有望なプレイヤーだった。 高校もサッカーの名門校にスポーツ推薦で入学。そこでも一年時からスターティングメンバ―としてウイングのポジションを任されていた。 当然、周囲の誰もが未来の日本サッカー界を担う逸材だと信じて疑わなかった。 そんな中悲劇はやってきた。 インターハイの地区予選で膝の靱帯を著しく損傷してしまったのだ。 あまりの激痛に、視界が狭まり、暗転する。 「―――！―――！！！」 意識が途切れる間際、聞き馴染みのある女性の声がした。 目が覚めると、真っ白な天井が目に入った。 直後、顔に暗い影が落ちる。それは幼馴染の浦河深雪だった。 毎日、実家の花を持ってきて見舞いに来てくれていたらしい。 別に恋人でもないだろうに･･･と思ったが、恥ずかしいので言えなかった。 それから数度にわたる手術の末、なんとか再びピッチでプレー出来るほどまで回復はした。 しかし、かつての輝きは失われていたのだった。 それでもサッカー選手になりたいという幼少期の夢は諦めきれなかった。 必死にリハビリした。 だが、以前と同じように動こうとしてもダメで、数えきれないほどの悔し涙を流した。 ある日、毎日見舞いに来てくれていた礼を言おうと深雪の花屋を訪れると奥からすすり泣く声が聞こえた。 見に行ってみるとそこには学生時代のアルバム、とりわけ調理実習や家庭科部の写真に涙が零れ落ちるのを目にする。 自分は知っていた。 彼女は家業を継ぐ為に、パティシエになるという自分の夢を諦めたんだ。 夢を諦めかけていた自分と姿が重なる。 でも、自分とは違う。まだ十分間に合う。 一瞬の逡巡ののち、翼は彼女の元へ歩みを進めた。 「俺に、お前の夢を叶えさせてくれ。俺も･･･俺の夢を叶えるの諦めないから。」 そう、彼女にプロポーズした。 数年ののち。 二部リーグのピッチに、彼は立っていた。 応援席には深雪の姿があった。 相手のディフェンス一人を抜くのに、身体も頭も目いっぱい使ってようやくといったところ。 『天才』だった自分はもういない。 それでも―――その顔は、笑っていた。

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