タグ： ラルト

「この世で一番信用なるものは証拠です。事実です。それをもとに組み上げる真実です。愛だの恋だの信頼だの心だの、そういったものはただの妄言であり真実に組み込む余地すらありません。」 父は早くに蒸発した。母は父の存在を思い出す私が憎くて仕方なかったらしい。 甘い言葉を囁いては仕事で忙しいと構うことはしなかった。お金がないからと何かを買い与えることも一切なかった。晩御飯だってずっと一人で食べていた。ごめんね、ごめんねと謝られ続けて、一時は全ての証拠から目を瞑って、私は愛されているんだと考えることをやめた時期もあった。 私が夜遅く、偶然目が覚めてしまった日があった。母親の物音が聞こえたので、少しでも話をしようと部屋を覗きに行った。 「あの子さえいなければ」 それを聞いた瞬間、すべてを察した。お母様にとって私は疎ましい存在でしかなかったのだ。言葉なんてものは、何一つ信頼足りえないものなのだ。もしかしたら口から出てしまっただけなのかもしれないと思ったが、少なくとも私にとって、愛しているという言葉を信頼できるほどの証拠は何一つとして存在しなかった。 その日から私は、信じることをやめた。 真実の見つけ方は小さい頃から通い続けていた図書館の推理小説が教えてくれた。それにあの日から脳が不要な情報を削ぎ落とすことを覚えたらしく、真実にたどり着くまでにそう時間がかからなくなった。 愛しているという証拠が見つけられないからお母様は私を愛していないのが事実。証拠は事実だけを雄弁に語る。言葉は嘘と虚飾、それから嘘のための少しの真実というスパイスを混ぜてこねたもの。 事実さえあれば、私は真実にたどり着ける。真実さえ信じていれば、もう何も怖くないの。 「別に子供にまでどうこうしたりはしませんよ？それ位の分別は流石にわきまえてますし。」 「…まあでも、真実でああいう子達を守るのもまた使命だと思うので。私の一なる真実を追い求める旅であることには変わりませんけど、別の側面から見ればそれはみんなを救う旅に見えるのでしょうか。」

※歌詞を引用、及び記載することは禁止となりました(Youtubeや歌詞サイトのURLだけ書くことをお勧めします)。
↑ページ上部へ