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センスの塊であることを期待されながら生まれた少女。幼少にその神童たる才覚を発揮し、将来は父親のようなスポーツ選手か、はたまた母親のような音楽家か、と言われたものであったが、今の彼女はどちらにもなれはしないことを理解している。 彼女の将来がどちらも選べなくなったのは、10年前に起こった自動車の事故によるものだった。 忙しい両親が奇跡的に揃って休暇を取れたことで実現した、初めての家族旅行、その移動中での出来事。 父親の運転する車が事故を起こし、車は大破、爆発炎上、当然車両前方に乗っていた両親は助かるはずもなかった。 運転に非があったのか、車自体に非があったのか、路面に非があったのか、天候に非があったのか、それとも後部座席に座っていた彼女に非があったのか、それは今となっては分からない。なぜならこれを目撃した人間はいないし、最先着したUGNの人間も還らぬ存在となっているからである。 覚醒の衝動で何が起こったかは置いておいて、ともかく彼女はここで覚醒し、UGNに引き取られる。 この事故は、ただの不幸な事故として世間的に片付けられた。救助に来た多数の人間の命が失われたことは、表に出ることなく片付けられた。 幼かった頃にはどういうことが起こっていたのか知るよしもなかったが、今は理解している。自分の終わりも同様に扱われるのだろうということも。 だからこそUGNに完全に忠誠を抱くことはできない。 しかしここを仮に出たとして、どこに行って、どう生きたらいいのか分からない。だから逃げることはしない。 殺した命の数は、数知れない。 彼女は父親のようにも、母親のようにも、なる気はない。 この血に塗れた手で、優勝の杯を受け取れるわけも、心を震わせる音楽を奏でられるわけも、ないのだから。 破壊の才能、覚醒の事情、両親の知名度、等の彼女を取り巻く様々な要因が、周囲より一歩大人びた子供という彼女作り上げた。そのため学校でも組織でも浮いてしまっており、友人は多くはない。 好きなものは褒められること、人が喜ぶ顔。 嫌いなものは他者からの励まし、同情。

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