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檳榔子黒龍(びんろうじぐろりゅう) 脱藩した元浪人。 恩には恩を、仇には仇を。その男は生まれながらにして強かった。 故に多くの人を救い、それでも男は独りだった。 愚直に真っ直ぐに、されど折れずに生きてきた男は周囲を助ける一方で 男を疎む者、男を恐れる者、それらが彼に脱藩を強いたのであろう。 それから、彼は多くの場所を転々とした。 医学や博物学はそこで身につけてきたものだろう。 そして今は世話になった植木屋に腰を落ち着けている。 ---以降、「花一つ、光に逢うて咲匂う」ネタバレ有--- 町人となった男はとある剣士から剣を習う。 男は主の命によりその病弱な剣士を看病しつつ、剣士を師と仰ぎ剣を習った。 男は医学に心得がある。病により、剣士の寿命は、先が見えていた。 己の命が尽きるのを感じた剣士は男に介錯を求める。 その言葉に、男はこう答えた。 「手合わせを願いたい」 ここでとある町人の男の話は終わる。

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