タグ： なばり 大谷隠(おおたになばり) ヨシアキ

「『私は唯の"読み手"』──なばりはそう答えた」 「なばりが招待に応じた理由は執筆の取材、もっと言うと"おもしろいことを期待した"からであった」 「『貴方のこころが、知りたいの』」 羽織姿のちんまい少女。 地の文を思わせる非常に独特な喋り方と白髪が特徴的。 しかしてその正体は巷で話題の新人小説家"大谷 隠(おおたに なばり)"である。 齢11にして硬派な文体の純文学作品で鮮烈なデビューを果たし、新人賞を受賞。 たまさか地元が近く、話題性のために『コズミックタワー』のプレオープンイベントにお呼ばれされた。 そんな彼女の興味の赴くところは作品のネタ、すなわち"面白い出来事"である。 いつか自身の求める至高の文を綴るために、今日も彼女はあちらこちらへ赴くのだ。 両親が物心つく前に蒸発しており、大きな屋敷に一人で住んでいる。 顔も知らぬ両親の代わりに、彼女は書斎に残された大量の文学作品に育てられた。 一通りの教養と独自の喋り方はそれらによって培われたもの。 お気に入りの作品はとある作家の私小説。 隠し子を育てる母親を描いた作品だが、筆者が数年前に失踪を遂げており未完となってしまった。 なばりの目的はこの小説の続きを読むこと、すなわち"とある作家"の作品の完全なる模倣。 そのために未だに理解の及ばない"こころ"を知るべくあらゆる人間の人生を取材している。 ……なお、"とある作家"の名は谷崎潤衣(たにさき うるい)────官能小説家である。

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