タグ： 警察 ファルジア

ときには喫茶店のベテランパートタイム、ときには高層ビルの受付嬢、ときには秘書、ときにはマフィアのボスの愛人……さまざまな顔を持つが、その正体はCIA捜査官の、とっても美人なお姉さん。外面が良く謙遜も程よく。決して相手を貶さず、常に笑顔をたやさない。そんな理想の“花”……なわけがなく。 自分に対する自信は人一倍。酒が大好きでよく後輩を連行してはウザがられるが、気にせず振りまわしまくるのが性分である。そしてなにより、対物性愛者のド変態であることが一番彼女を「残念」と評するにふさわしい理由になるだろう。 彼女は芸術品を取り扱う商家に生まれた一人娘である。家を継ぐために「完璧な女性」であることを求められた彼女は、アイデンティティとの乖離から逃れるためか、あるいは単に孤独だったのか、とにかくそのストレスから対物性愛者へとなっている。(というのは彼女自身の自己分析によるもの) そうして彼女は敷かれたレールの上を歩んできたわけだが……家人にとって一つ誤算があった。彼女は押さえつけられ続けることを良しとするような人間でなかったのである。家も継がず、許嫁との婚姻も拒否。あろうことか彼女はCIAなどという、ひどく危険な職に就くことを決意したのだった。 無事CIAでスパイ活動を始めた彼女は、しばらくは穏やか……とは言い難い日々を送ることになる。皮肉にも英才教育は非常にスパイ活動に役立ったらしい。生意気だが苦労人気質な後輩を従え、自由気ままに捜査に乗り出す姿は、楽しそうだったというのはその苦労人気質な後輩談。 そうして、CIAなんて特殊な職場において才能を発揮してしまった彼女は、数少ない休日に出会ったある偏屈な画家と結婚する。許嫁を放り投げ、式も挙げずに彼らは実質の駆け落ち婚に至り、ささやかな幸せの中で2人は1人の娘を授かることになる。 ……しかし、ルネが家族と三人で過ごした時間は非常に短かった。ある事件に巻き込まれ、夫は亡くなる。傷心のなか、娘まで巻き込むことを恐れた彼女は、頼るような親戚もなく、泣く泣く娘を孤児院に預けることになった。 その後もCIA捜査官としての仕事は続く。ますます仕事にのめり込むようになるが、数年ののち、怪我で足が動かなくなるのとともに引退。流れるように家に引き戻され、再婚を強いられても拒絶するほどの気力は、もはやルネには残っていなかった。

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