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飛鳥は埼玉の山中で猟師をして生計を立てている少し変わり者と噂されるの青年である。飛鳥自身は表情に乏しく、感情の起伏もあまりないため変わり者というよりは善良で大人しい穏やかな人物であるのだが、飛鳥が変わり者と呼ばれる理由はその見た目にある。 飛鳥は普段、頭に猫の被り物をして生活している。人前でそれを外すことはなく、外そうとすれば激しく抵抗する。飛鳥が猫の被り物をしている理由は、彼の幼少期を知る人間ならよく知っている。飛鳥は京都に生まれたが転勤族であった父の影響で幼少期は大阪で過ごしていた。中学生の頃、海好きの友人の誘いで海に出かけた飛鳥は激流に飲まれ、溺れ、そして頭に大怪我を負うことになった。顔面の左半分を岩に打ちつけ数時間の手術の後一命を取り留めた。しかし皮膚が抉れた部分はそのまま爛れたように跡が残り、左眼は二度と光を捉えることは出来なくなり、何より水に対する激しい恐怖心を植え付けられた飛鳥は海はもちろんプールや湯船にすら入れない状態になった。 顔の怪我跡は飛鳥を奇異の目に晒した。その視線に耐えかねた飛鳥が選んだのが『愛らしいもので自分を隠すこと』だった。猫の被り物はある意味さらに怪訝な表情を飛鳥に向かさせたが、自分自身に視線が向いている訳でなく猫に視線を向けているだけであり飛鳥からすれば全く気にならない。近所の子供から「猫猟師」と呼ばれているのを気に入ってすらいる。 飛鳥が猟師という職種を選んだのは祖父の影響があった。京都で猟師をしていた祖父は飛鳥に一等優しく、飛鳥もそんな祖父が大好きで、よく祖父のいる山に出かけてはとってきた獲物を鍋にして食べていた。少年時代の楽しかった記憶は飛鳥の記憶に強くこびりついていて、その記憶が飛鳥を山へ誘った。海を嫌い山に逃げたのも理由の一つかもしれない。 山には川や湖がある。飛鳥は猟師を志すと祖父を訪ね祖父と共に山に住み、狩りを学んだ。川には次第に慣れ、なんとか入ることもできるようになったが、湖はまだ恐怖が勝ったようで克服し切ることは難しくあまり入ることは出来ない。海に関しては一切近付かない。仮に海に近づこうものなら過呼吸を起こして倒れる自信がある。正真正銘トラウマなのだ。 飛鳥は生き物が好きで犬を1匹飼っている。相棒の名前はリョウ。非常に賢く人懐こいオスのドーベルマンで、仕事にはいつもリョウを連れて行っている。

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