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突発性難聴で、耳が遠い。だから大学に入って1年で手話と読唇術を会得した。いつもワイヤレスイヤホン付けてるし、話しかけても首振りなどで対応することが多いため、友達が少ない。それもこれもみんなの声が聞こえず、みんなに触れず、みんなが存在しているように感じないからだ。存在しないように感じる人たちと仲良くできるという方がおかしい。最も、存在しないのは自分の方かもしれないが。ただ七海真琴（ななみ　まこと）は視覚、触覚、嗅覚、聴覚、味覚すべてでその存在を感じることができる。同時に自分もこの世に存在している、と思えるのでそばにいたいと思っている。だが真琴に迷惑をかけたいわけではないので、真琴にウザがられればすぐに離れる覚悟はしている。その時は、せっかく大学で英語も学んだことだし、手話と英語と日本語の三つの言語の翻訳家として細々と生きていこうかな、と思っている。 視覚以外の五感に支障をきたしていることについて、自分なりにも調べているが過去に似た事例もなく、調査は順調とは言えない。人間の感覚器官について調べたため生物学に、感覚器官の障害の治療法について調べたため医学に少し明るくなった。 難聴になる前は、人と考えや発言がずれることが多かったため、いわゆる「おもしれー女」の扱いを受けていた。本人は大真面目に答えてるから、何が面白いのかは分からないけど皆が笑ってるし、馬鹿にされてるわけではなさそうだからいいかって思ってる。一緒にいると退屈しないから、周りに人が多いタイプだった。今は、友達は激減したが真琴がいるから寂しさを感じていない。あと二条君。 天然で考え方が独創的。喋り方とか雰囲気は胡蝶しのぶをイメージしてもらえたら。 彼女を悩ませていた、五感の消失は治り、聴力も正常になった。しかし、彼女の経験した音のない二年間は、あまりに寂しいものだった。その気持ちが分かるからこそ、彼女は身につけた手話を活かし、ろう者のセラピーのボランティアなどに参加し、自分と同じ寂しさを感じている人へ役立てようとしている。京都は壊滅し、自分のことを大切に思ってくれる友達を一人失った。しかし、杪依にはまだ、七海真琴という大切な友達が隣にいる。そしてなにより、杪依は生きている。そしてもう一人、杪依のことを大切に思ってくれる友達がいる。その友達たちの想いを一身に受け、今日も彼女は生きていく。これからも、必死に今日を生きていく。 「甲斐杪依といいます、よろしくお願いしますね」 「手話ですか？基本的な構造は日本語と同じなので、難しくないですよ？」 「自分の声が聞こえないこともあるので、あまり話すのは好きではない、かな」 『辜月のN』 （アイコンはマサキ様のまいよメーカーを使用）

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