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エデンに霧の結界<神のヴェール>を施した魔女を祖とする一族の末裔。外見年齢が14ほどで止まっているのと服装が女物なために一見少女のようにも見えるが、20代の青年。 始祖である"楽園の魔女"は絶大な魔力を有していたが、永い時を経て一族は衰退し、末裔である黒乃が保持する魔力も人並み程度。代々黒髪赤眼の一族だったが衰退とともに生まれる子の髪は白くなり、瞳も色を失くしていった。楽園の魔女が織り成した霧の結界は未だ効力を保ち、一族の者は霧から一定の範囲内にいればその加護で力が増す。 幼い頃に一族が皆殺しにされたが、最期の力を振り絞った母により霧の内側へ逃がされたことで唯一生き残った。 以来エデンの結界を守護する役割を果たすため、独り霧の中に留まり続けていた。黒乃の外見が少年のままなのは時の流れが異なる結界の中に長年居た影響。実は生まれてからの実際の年月(凡そ27年)と本人が結界の中で過ごした体感年月にも大幅に差がある。エデンの書物を読み漁っていたので知識は豊富だが、外の世界の常識にはひどく疎い。 霧の結界が一度その内に入ったものを解き放つことはない。このまま独り、忘れられた聖域で静かに生きて死ぬのかと諦観にも似た思いを抱いていた黒乃を外の世界へ引きずり出したのは、エデンの禁忌を犯さんと現れた一人の少年だった。 エデンを護るべく、霧は魔女の一族たる黒乃を結界の外へ喚び出し少年と対峙させる。瞳に強い意志を宿した侵略者<ゆうしゃ>と、失われた一族の誇りを抱く守護者<まじょ>の決戦の末、少年は黒乃の力によって世界のどこかへと弾き飛ばされ姿を消す。 エデンを護り抜いたはずの守護者<まじょ>は、使命を果たした昂揚と同時に落胆に包まれた。 そして、霧から解き放たれた彼は楽園を後にする。 初めて己の心を揺り動かした存在を求めて。 もう一度、あの高鳴る鼓動を胸に宿すために。 魔女は今日も、憎悪に身を焦がした勇者の瞳を探している。

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