タグ： 鬼の棲む

南方大悟(ミナカタ・ダイゴ) 一人称：俺、二人称：あなた、君、～さん。 職業は遺体衛生保全士。慶王義塾大学医学部医学科卒業。 普段は大人しく、控えめで、強く主張することは少ない。 逆に言えば、彼が強く主張した時には、何か彼の強い想いがあるのだと考えていいだろう。 10歳離れた妹・美香がいて、実家に帰った時には一緒に出かけることもあるくらい仲がいい。 年が離れているせいもあるが、彼が美香に対して甘いため、基本的に喧嘩をすることはない。 大学卒業後は研修医を経て、監察医として大学付属の東京都監察医務院に勤めていた。 そんな彼に転機が訪れたのは突然だった。 ある日、いつものように運ばれてきた遺体の解剖をしようとしていた時のこと。 その遺体は、大学生の女性のものだった。 死因は致死性不整脈による心室細動。 会う約束をしていた友人が、彼女が時間になっても来ないことから心配になって家に向かったところ、遺体を発見したという。 発見した時には死後半日は立っていたようで、腐敗による全身の浮腫がだいぶ進んでいた。 こんなに若い子が、こんな姿で亡くなってしまうなんて。 そして、娘の無残な姿を見なければいけない遺族を思うと、他人にも関わらず、本当に心が痛くなった。 「せめて見た目だけでも良くしてあげたいな。」 ふと心の声が口に出てしまったが、一緒に解剖をする上級医が返してくれた。 「彼女もエンバーマーの人がきれいにしてくれるさ」 エンバーマーが解剖後に修復してくれているのは、もちろん知っていた。 しかし、今の彼には自分の手で何かしてあげたいという気持ちが生まれていた。 解剖後、エンバーマーに修復工程を見せてほしいと頼んだところ、快諾してくれて、彼はその処置に同席することとなった。 処置はとても丁寧なもので、その手際に思わず見とれてしまった。 最後の工程に取り掛かろうとした時、エンバーマーが彼に手伝ってくれるかと聞く。 彼は喜んで頷き、指示を聞きながら、作業の準備を始める。 全身を洗浄し、衣装を着せて、化粧を施す。 エンバーミング全体からして見れば大きな工程ではないが、最終的な遺体の姿に反映される大事な工程。 そして終わってみれば、無残だった遺体は生前の姿と変わらないほどに美しかった。 その美しさに彼は感動し、手伝うことができた嬉しさを噛み締めていた。 また、監察医という仕事がありながらも、エンバーマーのやりがいを強く感じていた。 悩んだ末、彼は決断した。 「自分、この仕事やりたいです」 ———そうして、エンバーマーとなってから2年が経った。 この道を選んで正しかったと信じて、今日も彼は死者の声を聞き、亡骸を美しく彩る。 24歳：慶王義塾大学医学部医学科卒業 26歳：臨床研修医を終えて大学院に進学 29歳：大学院卒業 30歳：遺体衛生保全士になることを決意 32歳：現在に至る

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