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幼い頃に両親は他界し孤児院育ちで、双子の姉の飛依が唯一の家族だった。やがて成長し長い道のりを超えて、飛依と共に料理人として独立する。輝真がコックで、飛依がウェイトレス。双子２人でレストランを経営することは、子供の頃からの夢だった。 料理店の工事も無事に終わり、内装も整えた。都会から少し離れた場所のために中々お客さんは訪れないが、自然に恵まれた土地で、幸せで新しい人生がスタートするはずだった。 順風満帆に事は進み、経営２ヶ月目を迎えた頃。テレビや雑誌で有名な、料理界のカリスマと呼ばれる人物が来店する。店の未来を左右する大事なお客様とあって緊張したが、不手際も無く料理をお出しした。しかしその人は料理を一口も食べずに店や輝真を非難し始める。田舎の古臭いレストランだとかにわか仕込みの出来栄えだとか、その人は店を出る最後まで悪口しか口にしなかった。 それから時は経つが、例の客のせいで店にぱったりと人が寄り付かなくなった。調べてみると店の悪評がいたる所に広まっていた。どれもこれもデタラメばかりだ。それまで大事な収入源でもあったリピーターも顔を見なくなった。 口数は減り、何を話したかも思い出せない。不器用な姉が一生懸命作ってくれた手料理も喉を通らなかった。やがて飛依と顔を合わせることも無く、調理室に篭るようになる。 姉が心配するとは分かっていたが、一時的な気の迷いだったのか。愛用している包丁を胸に深く突き刺して……それから……。 飛依が輝真の自殺死体を確認し不定の狂気に陥ったときに、たまたま料理店の下で眠っていたシュド=メルが目覚める。そうしてクトーニアンによって、輝真は霊体として現世に留められた。 飛依の発狂内容は「輝真の幸せのために店に尽くす」というもの。そのため店の中ではまるで童話の『注文の多い料理店』のような、変わった数多の注文を要求された。店内にはコックを呼び出すためのベルがあるのだが、それを押すと飛依の姿を装おった輝真が現れる。 以降のことは飛依の日記より。 「今日もお客様は来なかった。わたしは毎日レストランのお掃除をして、いつでもお客様を待っている。弟も毎日調理室で下ごしらえをして、料理の仕込みに抜かりは無い。二人で話し合って、コース料理の最後のデザートはパンケーキに決まった。弟の得意料理。きっとこれを食べたらどんなお客様だって美味しいって言ってくれる」 「お客様から感謝の言葉をいただいたら、わたし達も最高の笑顔でお見送りしよう。『お客様の笑顔と感謝の言葉が何よりの至福です』と、注意書きを添えて」 飛依の書く魔術の込められる店の広告に呼び寄せられた探索者達によって、双子は救われた。シュド=メルは本格的に目覚めて料理店は丸呑みされる。森の奥に眠る、孤独な料理店はもう残っていない。狂気に陥った飛依も店と共に丸呑みにされ行方不明、輝真は無事に成仏。 しかし上記の料理人を呼び出すためのベルによって、飛依の姿を装おった輝真だけが生き残ることになった。現実を受け入れるには時間を要したが、現在は自分を救ってくれた料理人の探索者の元で働いている。 少女がそのままの姿で歳だけを重ねた様な、年齢を感じさせない女性(27)。なのだが人格は輝真のため、如何せん表情が乏しい上に怖い。飛依本来の舌が回る甘ったるい声なのだが、今では一人称も「自分」であり、数少ない言葉もぶっきら棒に(輝真の生前の一人称は「俺」のため、少しはマシになった)。料理馬鹿のため、自然と緩く巻かれた髪も後ろに束ねるだけなど正に宝の持ち腐れ状態にある。 過去の件もありマスコミ関係の人物が大嫌い。 得意料理は姉が大好きだったパンケーキ。腕はまだ成長過程だが、新しいメニューを考えるのが好き。味覚に優れており勉強熱心。姉と料理店を経営していた際も、他のお店では食べられないコース料理を出してみようと、毎日あれこれ頭を捻っていた。 好きな料理は姉が余った食材で作ってくれた、ぶきっちょなサラダ。幼い頃に卵アレルギーだったので、今でも少し苦手意識が残っている。

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