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坂本大聖(さかもとたいせい)
ID:3243975
MD:deacdb272b0e9a5fb05f9f6a0073e822
坂本大聖(さかもとたいせい)
タグ:
こゝろ-2020.7.1,6,10,16,20
カイロウ-2020.7.20,21,23,24,25
アイル探索者
非表示
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通常表示
生まれ・能力値
STR
CON
POW
DEX
APP
SIZ
INT
EDU
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初期
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その他増加分
一時的増減
現在値
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CON
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DEX
APP
SIZ
INT
EDU
HP
MP
初期
SAN
アイ
デア
幸運
知識
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通常表示
SAN
現在SAN値
/
(不定領域:
)
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簡易表示
通常表示
技能
職業P
/
(うち追加分:
)
興味P
/
(うち追加分:
)
表示
初期値の技能を隠す
複数回成長モード
非表示
簡易表示
通常表示
<戦闘技能>
成長
戦闘技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
回避
キック
組み付き
こぶし(パンチ)
頭突き
投擲
マーシャルアーツ
拳銃
サブマシンガン
ショットガン
マシンガン
ライフル
非表示
簡易表示
通常表示
<探索技能>
成長
探索技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
応急手当
鍵開け
隠す
隠れる
聞き耳
忍び歩き
写真術
精神分析
追跡
登攀
図書館
目星
非表示
簡易表示
通常表示
<行動技能>
成長
行動技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
運転(
)
機械修理
重機械操作
乗馬
水泳
製作(
)
操縦(
)
跳躍
電気修理
ナビゲート
変装
非表示
簡易表示
通常表示
<交渉技能>
成長
交渉技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
言いくるめ
信用
説得
値切り
母国語(
)
非表示
簡易表示
通常表示
<知識技能>
成長
知識技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
医学
オカルト
化学
クトゥルフ神話
芸術(
)
経理
考古学
コンピューター
心理学
人類学
生物学
地質学
電子工学
天文学
博物学
物理学
法律
薬学
歴史
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戦闘・武器・防具
ダメージボーナス:
名前
成功率
ダメージ
射程
攻撃回数
装弾数
耐久力
その他
%
%
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簡易表示
通常表示
所持品・所持金
名称
単価
個
価格
効果・備考など
価格総計
現在の所持金:
、 預金・借金:
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通常表示
パーソナルデータ
キャラクター名
タグ
職業
年齢
性別
身長
体重
出身
髪の色
瞳の色
肌の色
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その他メモ
とある大手出版社の新卒一年目。配属された先はスピリチュアルな内容を扱う部署であった。 一時はこゝろのどこかでオカルティックな事象を否定したいと思っていたものの、とある体験の後より寧ろ怪異の類を追い求めることに積極的になり出した。 出身は東京大学で剣道部OB。いわゆる敬語キャラで、年下に対しても丁寧に話す。一人称は僕。 自分の頭の良さに自覚があるが、自分より上の存在である人物を幼少期に認めたことで謙虚になった。 その人のことを先生と呼び熱狂的なほど慕っており、一度語らせ出せば止まるところを知らない。 基本的に温和な性格だが頑固な一面も。自分が納得できなければ意見を曲げようとしないが、納得さえできれば考えを改めることもある。また好き嫌いが激しく、好きな事柄に対しては強い執着を見せることも。 ぶっちゃけひとことで言えば「クソ地雷男」だが、関係の浅い人にはただの良い人に見えがち。 以下「こゝろ」通過前。秘匿HO2。 先生のことを心から尊敬しており、先生の役に立てるならなんでもしたいし、先生の良き理解者になりたいと望んでいる。 遡ること12年前、それは坂本が小学4年生になったばかりの春だった。親の転勤に合わせ、知り合いの全くいない土地に引っ越すことになる。母親に連れられ、嫌々ながらも引越しの挨拶に付いていく坂本。そして、挨拶回りの最後の家で、先生との出会いを迎えることとなる。先生は当時大学生であったが、既に近寄りがたい雰囲気を纏っていた。坂本は終始母親の後ろに隠れ、彼女が先生と二言三言交わすのを聞いていた。 「……きみ。今年十になるんでしょう。」 去り際、不意に声を掛けられ、坂本は振り返る。しかしその目に映った人物はそれ以上言葉を発さない。いつまで見つめあっていただろうか。いや、それは本当は一瞬のことだったのかもしれないが、坂本は先生の瞳の奥に飲み込まれるような感覚を抱いた。 「なにしてるの大聖、帰るわよ。」 くるりと踵を返し、母親の元へと急ぐ坂本。その胸の中には既に引越しによる不安などはなく、ただひたすらあの不思議な人物のことで占められていた。 さしもの先生も、翌日から少年が毎日家に訪ねてくるようになるとは思わなかっただろう。坂本は行動派なのだ。 また、自分の顔が相手に嫌悪感を抱かせない程度には整っており、かと言って誰彼構わず邪な思惑を抱かせることはないということを、坂本は知っていた。要するに「自分が親しくしたい相手だけに取り入るのには丁度良い顔」なのだ。少なくとも坂本自身はそう自負していたし、それを自覚している自分のことを賢いと思っていた。 しかし、その自尊心は初日にして打ち砕かれる。 「きみ、昨日の……。帰りなさい。」 夕方、先生が帰ってくるのを玄関の前で待っていた坂本に、先生はただそれだけ声を掛け、自分だけ家に入ってしまった。そしてその日はそれから家の外に出てくることはなかった。 これが却って坂本を燃え上がらせた。必ずかの掴み所のない男を振り向かせねばならぬと決意した。坂本は温和な顔をしている。実際、普段は人と争うことを厭い、周りに合わせて暮らしてきた。けれども一度譲れないことと定めれば、人一倍に頑固であった。彼の韋駄天も斯くや。 兎角その頑固さを以てして、坂本はとうとう先生の家に招かれることとなる。それは蝉のうるさい夏の日で、茹だる熱気も収まらぬ夕暮れだった。 「……入りなさい。」 数ヶ月ぶりに聞いた声は果たして先生の声だったのだろうか。あれから一言も先生が話すのを聞いていなかった坂本は、一瞬暑さによる幻聴を疑った。が、しかし、先生はこちらに顔を向け、玄関の扉を開いている。 招かれた。招かれたのだ。そう理解が及んだときには既に坂本の足は先生のもとへ向かっていた。 それからはあっという間だった。夕暮れ時になると坂本は先生の家に上がり、先生の出してくれた麦茶を飲みながらいろいろな話をした。学校の授業は面白くないこと、新しいクラスメイトとも話が合わないこと、休み時間は本ばかり読んでいること、家に帰っても父は仕事でいないことが多く、母も忙しそうにしていて話す時間もあまりないこと、だからこうして先生と話せる時間が楽しいこと——。先生は静かに相槌を打ちながら、話を聞いてくれた。そして坂本が話し終わると、いつも何かしらの言葉を返してくれた。その言葉の一つ一つが坂本にとっては新鮮で、眼から鱗が落ちるようだった。 例えば、会話中突然相手が戸惑うことがあるのは、自分の話が飛躍するように聞こえるためであることや、そんなときには順を追って考えたことを話せばいいことを教えてくれたのも先生だったし、何か夢中になれることがほしいとこぼしたところ、君にはこれが合うだろうと言って剣道を一から教えてくれたのも先生だった(実際それは当たっていて、坂本は中学から大学に至るまで剣道部に所属し続けることになる)。 先生自身から『先生』というあだ名があるとは聞いていたが、もし聞いていなかったとしても、坂本が彼を『先生』と呼ぶのは自然なことだっただろう。それほどまでに坂本は先生から多くのことを教わったし、いつしか彼を心から尊敬するようになっていたのだ。 坂本が中学、高校、大学と進むにつれ、互いに忙しくなっていったため、先生のもとへ通う頻度は少なくなってしまった。おまけに1ヶ月前、先生は「田舎に引っ越します。」とのみ書いた手紙だけを残していなくなってしまった。電波も届かないのか、今や連絡も取れない。 それでも先生はやはり先生だし、出会った頃の先生の歳を抜かしてしまった今でも、彼を尊敬し先生と仰ぐ心には一点の曇りもない。 「こゝろ」通過後 先生からの手紙は先生の遺品であるKの真剣とともに丁寧に仕舞い込んだ。 これは僕だけに宛てられた僕だけのための手紙。これを書く間先生は僕のことだけを考えていた。あの忌々しい牝狐でもお嬢さんでも奥さんでもN村に来た他の客人でもそしてKさんでもなく、僕だけのことを。例え僕のためではなく、独白を通じて自分の心の重荷を下ろすために手紙を書いたとしても。それでもその瞬間は先生の頭には僕だけしかいなかった。 そう思うと、無力感や喪失感、やるせなさ、鬱屈、失望、そして嫉妬……。休む間もなく坂本を襲い続けるどろどろとした感情から目を逸らし、先生と過ごした美しい時間だけに目を向けることができた。先生の瞳に自分だけが映っていたあの時間を思い出せば、その目を背けたくなるような自分の一部を忘れていられたし、思い出に浸れば浸るほど坂本の中の先生は美しく清廉潔白な人物へ、崇拝は確固たるものへと変じていった。 しかし結果として先生の現在を口にすることは坂本にとって禁忌となった。自分の中の先生と実際の彼が乖離することは到底認められないからである。 したがって、坂本は先生を熱狂的に崇拝しながらも、同時に先生の現在については一切語らないという奇妙な矛盾を抱えることとなった。 小休止 唯一の友人・舞園恭介の証言 俺は舞園恭介。坂本とは大学の同期で、剣道部でも一緒だったな。 坂本はちょっととっつきにくいところもあるけど、いい奴ではあるんだ……多分。 それからあいつは剣道が強い。俺があいつに勝てたのなんか、数える程しかないぞ。 だから正直主将はあいつがなるべきだと思ってたんだが、俺があいつを推薦する前に逆に俺があいつに推薦されて、それから流れで俺ってことになっちまったんだよな……。まあおかげで坂本が単独行動しようとしても「お前が推した主将の話を聞け」って言えば大抵聞いてくれたし結果オーライかな! で、今回坂本を旅行に誘ったのは、実は俺が不眠症で慰安旅行を医者に勧められたからなんだ。就職先が俺に合わないのかなんなのか……。医者も原因はわからないって言ってたから俺にわかるわけがないんだけど、まあでも一人で旅行ってのがシケてるのは俺にだってわかる。 ま、そういうわけで坂本を誘ったんだが、珍しくすんなりOKが出たんだよな!正直あと2、3日粘るまで考えてたから本当に良かった!匣伏、楽しみだな〜! ※坂本にとっては、若干鬱陶しいものの大学生活上助けられたこともそこそこあるため、こゝろ関連以外の交友関係の中ではほぼ唯一邪険にしきれない相手。田舎への旅行もぶっちゃけ事件以来地雷だが、舞園がいつになくやつれており、さすがに心配になったため行くことにした。 「カイロウ」通過後 坂本には友と呼べる人間が少ない。いや、いることにはいるのだが、坂本がそう認識していないのだ。それでも坂本を友と言って憚らず、坂本もまた渋々ながら友と認めるほぼ唯一の相手、それが舞園恭介である。 さて、事の発端はその舞園からの旅行の誘いであった。学生時代には劣るもののかなりの頻度で顔を合わせていた二人であったが、1ヶ月ほど前からか、舞園の目の下には隈ができ始めていた。最初は気にも留めなかった坂本だったが、隈は日を追うごとに濃くなっていく。そしてつい先日、舞園は職場に出す用だと言う診断書を持って現れた。聞けば、どう言うわけか同僚が病院に連れて行ってくれたこと、不眠症の診断を下され慰安旅行を勧められたこと、そしてその旅行に坂本を誘いたいことなどを訥々と述べた。坂本は舞園が自身のやつれ具合を自覚していなかったことに呆れつつ、いつの間に剣道から野球に鞍替えしたんですか、などというくだらない冗談を言う気も失せて、珍しく二つ返事で承諾してしまった。舞園は驚きのせいか跳ね上がると、いそいそとブックマークのされたウェブサイトを坂本に見せる。それはいわゆるまとめサイトで、「今アツい!これから知名度の上がる観光地7選!」と題されたお世辞にも参考になりそうにないものだったが、舞園はそこで取り上げられているとある村を熱心に推してみせた。あまりの勢いに気圧されつつ、舞園のための慰安旅行なんですから舞園が行きたい場所でいいですよと言うと、舞園は心底嬉しげな様子でその場で交通機関や宿の予約などを済ませてしまった。男二人の匣伏行きが決定した瞬間だった。 今になってみればおかしなことばかりだったと考えながら、書きかけの記事のファイルを閉じて寝支度をする。 舞園はいわゆるパリピというやつだと坂本は思っている。明るく社交的で屈託がなく、誰とでもすぐに打ち解け、いつの間にか人の輪の中心にいるような男なのだ。欠点として唯一挙げるとするならば少し鈍感なところがあるくらいか。しかしそれすらも無意識に武器として、先生をおいて他に誰も成し得なかった坂本の懐柔を叶えたことを考えると、そもそもこの男には欠点らしい欠点がないのかもしれない。舞園に負の感情を抱く者が見当たらないことも頷ける。 その舞園が不眠症である。そもそもそれがおかしかったのだと坂本は思う。生来悩みなどない男だった。あってもそれを表に出さなかっただけかもしれないのだが……否、普通なら悩む様なことも重く捉えず、問題があっても解決したそばからケロッと忘れていくタイプである故その心配はないだろう。昔から初対面の人と親交を真っ先に結ぶのは舞園だったし、親やそれ以上世代が違ってもいつの間にか仲良くなるのが常の彼が職場で孤立することも考えにくい。 では何が発端なのか。やはりあの虫の様な悍ましい何かなのだろうなと思う。あのとき舞園の頭から這い出し、日の光のなかで溶けて行ったあの生き物。坂本はそれが何かは分からない、が、確かに舞園を、そして連鎖して匣伏の村人たちを苦しめていたのだろうということだけは状況から推測できた。 となれば、あの村に行けたのは結果として良かったのかもしれない。あの村にもし行かなければ、恐ろしい思いこそしなくて済んだものの、舞園はあの虫の様な何かを頭の中に飼ったまま永遠に不眠症に悩まされていただろう。いや、もしかするともっと恐ろしいことになっていたのかもしれないと考えてから、妙な悪寒に襲われた。いやいや、そんな、まさか。 とにかく舞園を救えて良かった。舞園もあれ以来ぐっすり眠れる様になったと言うし、これで僕自身も安心して寝ることができる。そう思って目を閉じた。 ——それから数日経った。舞園は下田女史と連絡が取れなくなったとぼやいていたが、あの短い旅で逆にここまで縁が続く方が不思議だろう。……とはいえ、斯く言う坂本も宗谷氏とは連絡をとっていた。まさか舞園より僕の方が関係性が長続きするとは、と驚いていた矢先、急に返事が来なくなった。普段ならこの人との縁もここまでとさして気にしなかっただろう。しかし、ほんの数日接しただけとはいえ彼の人の良さは感じ取っていたし、忙しくて返事ができないだけにしてもその旨を一報くれる様な人だと思っていた。だからだろうか、嫌な予感がした。 妙なことは重なるもので、「家に来てくれ」とあまりに簡素なメッセージが舞園から届く。退勤のタイミングだったため、行きますとこちらからも簡単に返し、すぐさま舞園の安アパートに向かった。 辿り着いてみればいつも通り鍵は開いたままで、不用心なことだとため息をつきつつ玄関の扉を開く。キイ、と築数十年の年季を主張する音を無視して中を覗けば、舞園は彼の定位置たる窓の横の座椅子に座っていた。表情は逆光気味でよく見えないものの、座れよと彼の斜め前の座布団を指し示す。坂本は勧められるまま家に上がると、立ち上がり台所へ向かう舞園と入れ違いに座布団に腰掛け目の前の窓を眺めた。この部屋は西向きで、今の時間帯はちょうど西日が部屋に差し込む。眩しくて敵いません、と文句を垂れながらも坂本は毎回その席に座る。先生と初めて会った日や初めて家に招かれた日にも周りがこんな西日に照らされていたせいか、その赤い光を眺めていると充足感を抱くのだ。ああ、先生……。 恍惚と目を閉じた坂本は、不意に光を遮られたのを感じて目を開ける。視界に飛び込んだのは、西日よりもさらに鮮烈な赤だった。それは坂本の腹から生えた一柄の包丁と誰かの腕を彩る様に、ごぼごぼと吹き出てくる。状況を理解するのが先か、猛烈な痛みを自覚するのが先か。たまらず坂本が崩れ落ちると、真っ赤な腕は坂本の腹から無造作に得物を引き抜いた……と思うともう一度坂本の腹に突き立てる。腕の主は痛快そうに高笑いした。 「あっははははは!はは!あはは!俺はな!ずっと、ずぅーーーーーーーーーーーっと!あはっ!こうしてお前を殺したかったんだよ坂本ぉ!あっははは!楽しいなあ!あははははは!」 そう叫びながらもう一度、二度、坂本を差し続ける男があの舞園恭介だとは誰も信じられないだろう。目を充血させ、息遣いも荒く、赤い光を一身に纏うその男は最早狂人であった。 と、不意に動きがぴたりと止まる。彼は目の前に横たわる坂本と血に濡れた自らの両の腕を見比べ、初めて自分が何をしたのか気づいた様な顔をした。西日の中でさえ青ざめていると分かる顔で彼は震え出す。手から落ちた包丁がカランと乾いた音を立てた。 「待て、おい……俺が、俺がやったのか……?坂本?坂本?なあ冗談だって言ってくれよ、なあ、何かのドッキリか?なあ?なあ?俺じゃないって言ってくれよ、なあ……」 黙り込んだ舞園が次にしたのは、自分が落とした包丁を拾い上げ、自らの首のど真ん中に突き立てることだった。先程の比ではない勢いで吹き出した舞園の血はあっという間に辺りを濡らし、その体はどさりと坂本の目の前に投げ捨てられる。旅行に行く前よりも濃い隈を涙で濡らした彼の瞳は、すでに何も映さなくなっていた。 朦朧とする意識の中、坂本は舞園の亡骸の向こうにぽっかりと口を開けた闇を見た。それはつい数分前まで二度と見たくないと思っていた、しかし今の坂本にとっては求めてやまないものだった。 「カイ、ロウ……」 坂本は這いつくばりながら感覚の消えかけた腕で舞園のまだ暖かい体をなんとか抱え込むと、気力を振り絞りそのままカイロウの中へ身を投げた。二人を飲み込むと穴はスッと消え去る。残されたのは二人の男の血と西日で赤く染められた、がらんどうの部屋だけだった。 気づくと見覚えのあるバスに乗っている。と、隣に座っていた舞園が不意にこちらを向いた。 「坂本……?生きて、る……?」 あまりにも濃い隈と怯えた声に、それが夢ではなかったことを思い知らされる。と同時に無事「戻れた」ことに安堵した。 「大丈夫、大丈夫ですから……。次こそは、絶対に上手くやりましょう……」 柄にもなく舞園の肩を抱き、背中をさする。いつもならおどけるであろう舞園も大人しくこくこくと頷いた。 これからまた、あの悪夢を繰り返さないよう手を打たねばならない。 しかし前も「怪狼」は封じたはず。これ以上一体どうやって?……いや、待て、「蟲」は追い出したはずなのに、なぜまた舞園は不眠症を再発したんだ?あれ、追い出したはずだよな?何故追い出していないことになっているんだ? 混乱した坂本は恐る恐る俯く舞園に尋ねる。 「僕たち、前回「蟲」を追い出す儀式、しましたよね……?」 「え?なんのこと?」 「あ、その……実は森の中で僕が呪文を唱えたのがそれなんですが。説明してませんでしたよね……」 「ああ、あれがそうだったの!?それのことなら……」 一瞬黙り込む。思い出しているのかと様子を伺う坂本の耳に入ってきたのは、舞園のものではない声だった。 「……しましたねえ。気づいちゃいましたかあ。うふふ。ね、これはもし君たちがその儀式ができてなかったときに何が起きてたかって言うのを教えてあげよう、っていう僕からの心遣いなんですよお。ほら、坂本くん、気にしてたみたいだったし、ね?」 舞園、否、舞園の形をした誰かが言葉を紡ぎながら徐ろに顔を上げる。見るなと脳が警鐘を鳴らすが、どうしても目を逸らすことができない。果たして、顔面があるべき場所には、カイロウよりも深い闇が誘い込む様に広がっていた—— 「……っ」 坂本はガバリと飛び起きる。全身が冷や汗でぐっしょりと濡れており、息すら荒い。慌てて携帯を開き記憶にある帰宅の翌日の日付だと認識して初めて、早鐘はその速度を緩め始めた。深夜2時である。 それにしてもなんと恐ろしい夢だったことか。しかし夢だと断じるにはあまりにもリアリティのある光景で、それこそ本当にもし儀式を行わなかったら辿り着いていた未来だったようにしか思えなかった。なんとかしてそれがただの夢だと証明したかったが、あののっぺらぼうのねっとりとした声が梅雨時に肌に張り付くTシャツのように不快に耳に張り付いて離れず、本物の舞園を電話で叩き起こす気には到底なれなかった。かと言って寝直すこともできず、結局一睡もしないまま朝日を見ることになった。 さすがに明るくなってくると気持ちも落ち着いてきて、いつも通りに出勤した。無断欠勤となったはずの月曜日は偶然原稿を書く日だったため特に何の咎めも受けなかったものの、代わりに昨日今日は1.5倍働くことになった。持ち帰り残業というやつである。旅の疲れも重なり疲れ果てた坂本が退勤後結局舞園に電話で愚痴を溢すことになるのは無理もなかっただろう。 「……そういうわけで仕事量が多かったんですよ。上司に何か言われるよりはマシでしょうが」 「うーん、それは悪いことをしたな。今日まで有給取ってた俺は謝るしかできない!ごめん坂本!」 「いえ、自分だけ長めに休みをとっていたことは腹立たしいですが、舞園のせいではありませんから」 「とか言いながら怒りに満ちた荒めのタイプ音がこっちまで聞こえてくるんだけど。俺、なんかしてあげられない?」 「単純に今日中にこの記事を仕上げないといけないから急いでいるだけですが。……しかし、そうですね。それならひとつだけ質問に答えてもらえませんか」 「お?なんだなんだ?なんでも答えちゃうぞ?」 好奇心旺盛な少年の様な声で応えた舞園にこんな質問をするのはいかがなものだろうか。しかし。 「舞園は今まで、僕のことを殺したいと思ったことはありますか」 なるだけ平静を装おうとしたが、記事を書く手が止まる。3秒の沈黙。刹那、端末の向こうから、カラン、と音がした。 「嫌だな〜!?なんでそんな発想になるの坂本くんさあ!?びっくりして包丁落としちゃったじゃんちょっと!!足にでも落とそうものなら大惨事よ!?血飛沫ブシャーよ!?あっぶないなあ〜!?」 静寂を破るにはあまりに分不相応な大声が坂本の鼓膜を突き刺す。坂本は思わず眉を顰め、通話の音量を最小限に絞った。 「………こと言………坂本…………離……………うだろ」 「え?今音を小さくしたのでよく聞こえなかったんですが、なんて言いました?」 音量を元に戻しながら聞き返すが。 「ん〜俺自身なんて言ったかもう忘れちゃったし多分大したことじゃないわ!」 「自分の発言に責任を持ってほしいといつもあれほど……」 「ごめんって〜」 からからと笑う舞園に呆れつつ、自分はあまりにも馬鹿馬鹿しいことを気にしていたんだろうなという気になった。 「まあいいです。変なことを聞いた僕が悪かったんでしょう。そんなことより包丁の扱いには気をつけてくださいよ」 「分かってるって!なんか妙に錆びてる感じがしたから使う前に研いでたんだよ!」 「単純にあなたの管理が雑だっただけでしょう。どうせ洗った後拭きもせずにしまったんじゃないですか」 「確かに俺ならやりかねないな〜。次から気をつけるよ」 「是非そうしてください。……ではそろそろ原稿に戻ります。またご飯でも食べましょう」 「おう!うちに作りに来てくれてもいいんだぜ!」 あなたの方が料理は得意でしょう、と鼻で笑いながら電話を切る。 いつも通りの舞園だった。良かった。夢は夢だし、舞園の頭の蟲の件は確かに解決した。坂本はひとつため息をついて、最後の一文を書き上げた原稿を眺める。 「コラム・神秘の村〜匣伏村の伝統と祭り〜」。そんな陳腐とも言えるタイトルをつけられた記事の中身もまた陳腐で、ただただ魔除けの香や匣伏式住居のこと、そしてこれから復興する祭のことを見所として紹介しただけの薄っぺらいものである。だが、それでいいと坂本は思っている。自分たちが体験したことをありのまま書いたところで一笑に付されるのが関の山、仮に真に受けた者が真偽を確かめようと匣伏に向かうとするならば、行動力のある馬鹿にふさわしくあの封印を解こうとしないとも限らない。それくらいならただのパワースポット好きのミーハーを少し集めた方が良い。祭の際の魔力の供給的な意味で村のためになるだろう。 そこまで考えたところで失笑する。先生の一件を根本から否定したくてたまらなかったはずなのに、いつの間にか自分はそれを肯定する立場に立っていて、しかももう引き返せない場所まで進んでいた。 「……ふふ、それでも」 僕は先生をお慕い申し上げております。たとえ先生が親友をその手にかけたのだとしても。本当にあの忌まわしい牝狐にその身を食われたのだとしても。 先生がしたことならば全て意味があって、そのひとつひとつが先生だからこそ成し遂げられた偉業なのだ。怪異が、人智を超えた何かが存在しようとも、先生は決してそれに屈したわけではなく、敢えて自ら近づき給うたのだ。自ら飛び込み給うたのだ。それを御そうとされたのだ。そう考えを改めてみれば、坂本は幾分心が軽やかになったのを感じた。 ならば僕も先生がそう道を示された様に怪異を御さんとしようじゃありませんか。こんな職業に就けたのも先生のご遺志を継ぐことを運命づけられていたからに違いありません。これからはもっと積極的に先生のこゝろに報いねば。もしそれで命を落とすならそれもまた一興、先生に殉じたと胸を張って黄泉の国へ渡りましょう。そして今度こそ先生と手を取り合い、明けることのない夜の中を語り明かすのです。 そう決意した坂本は気付かない。自分がその熱量で、自身の中の先生の人間臭く悍ましい部分を融かし消し去ってしまったことも。そして自分もまた別の人物から恐ろしいほどの熱量を向けられていることも。
※
歌詞を引用、及び記載することは禁止となりました
(Youtubeや歌詞サイトのURLだけ書くことをお勧めします)。
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